常盤座

常盤座（ときわざ）は、1887年（明治20年）に浅草公園六区に開業し、1991年（平成3年）に閉鎖された劇場兼映画館です。当初は「常磐座」と表記され、後に「常盤座」「トキワ座」と改称されました。

開業から浅草オペラ発祥まで

常盤座は、根岸浜吉が設立した根岸興行部によって建設されました。開業当初は、当時流行していた道化踊りの興行を主な目的としていましたが、歌舞伎や新派劇、連鎖劇なども上演し、映画の上映も行いました。1912年（明治45年）には、根岸浜吉の死後、女婿の小泉丑治が経営を引き継ぎ、劇場名を「常盤座」と改称しました。

1916年（大正5年）には、近隣の劇場「金龍館」「東京倶楽部」とともに共通入場券を導入し、興行を強化しました。同年、帝国劇場洋劇部解散後、高木徳子らが設立した「歌舞劇協会」が常盤座で公演を行い、1917年（大正6年）1月22日にはオペラ『女軍出征』を上演し大ヒットしました。これが「浅草オペラ」の発祥とされています。その後、「浅草オペラ」は主に「金龍館」を舞台とするようになり、根岸興行部は「根岸大歌劇団」を設立しました。

関東大震災と復興、そして「笑の王国」

1923年（大正12年）の関東大震災で常盤座および根岸興行部は大きな被害を受け、松竹の傘下に入りました。1924年（大正13年）には「根岸大歌劇団」が解散し、松竹の経営下で常盤座は復興しました。その後、常盤座は帝国キネマ演芸の封切館となり、金龍館は軽演劇の実演興行、東京倶楽部は洋画の二番館となりました。1930年（昭和5年）には、鈴木重吉監督の『何が彼女をさうさせたか』が常盤座で上映され大ヒットしました。

1933年（昭和8年）には、古川緑波（古川ロッパ）や徳川夢声らが軽演劇の劇団「笑の王国」を常盤座で旗揚げし、1943年（昭和18年）の解散まで同劇場を拠点に活動しました。1943年（昭和18年）には、松竹とパラマウント・ピクチャーズが設立した松竹パ社興行社が解散し、常盤座は松竹洋画興行部（SYコンパニー）の系列に加えられました。

戦後の復興とストリップ、そして閉館へ

第二次世界大戦終結後、常盤座は復興し、1948年（昭和23年）にはヘレン滝が日本初の踊りを取り入れたストリップショーを実演しました。これが浅草六区におけるストリップ興行の始まりとなりました。

1965年（昭和40年）には、松竹が常盤座の経営を子会社の中映に移管し、劇場名を「トキワ座」と改称しました。しかし、1984年（昭和59年）には休館となり、閉鎖された正面入口には自動販売機が並ぶようになりました。

1987年（昭和62年）には、創業100年を記念して「おかみさん会」の協力により、演劇や音楽ライブの会場として復活しました。アインシュテュルツェンデ・ノイバウテンやBO GUMBOSなどの公演も行われ、1989年（平成元年）には関根勤が主宰する「カンコンキンシアター」の旗揚げ公演も開催されました。また、ラモーンズや少年ナイフ、The ピーズといったアーティストのライブも開催され、その模様は映像作品として残っています。

石坂浩二が主宰する「劇団急旋回」も1989年から1991年にかけて毎年公演を行いました。しかし、建物の老朽化が進んだため、1991年（平成3年）9月30日に完全閉館し、104年の歴史に幕を閉じました。閉館に先立ち、NHKで特別番組『さよなら常盤座 浅草芸能グラフィティー』が放送され、渥美清がナレーションを担当しました。現在、跡地には商業施設「ROX3」が建設されています。

常盤座は、浅草のエンターテイメントを支え続けた歴史的な劇場として、今もなお多くの人々の記憶に残っています。

他地域の常盤座

日本各地には、同名の劇場や映画館が存在しました。

芝居小屋
常盤座（岐阜県中津川市、1891年 - 現存）：地芝居の芝居小屋として現存

映画館
常磐座（埼玉県児玉郡本庄町七軒町、現在の本庄市駅南1丁目、大正時代）：かつて存在した映画館
常盤座（大阪市南区千日前、現在の同市中央区千日前2丁目8-4、明治 - 2001年解体）：現在はグランデビルというビルが建っています
常盤座（京都府紀伊郡伏見町字上風呂屋町、現在の京都市伏見区風呂屋町、大正時代）：かつて存在した映画館

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