ジャック・アルデル

ジャック・アルデル（Jacques Hardel）は、17世紀フランス王国に生きたクラヴサン奏者であり、バロック音楽の作曲家です。1643年頃に生まれ、1678年3月に35歳前後で早世したため、その活動期間は短いものでした。

アルデルは楽器職人の家系に生まれました。祖父ジルは17世紀前半に活動し、父ギヨーム（1676年没）は弦楽器製作者でした。母はマルグリット（旧姓ユレル）という名前でした。このような背景は、彼が音楽、特に鍵盤楽器に親しむ上で影響を与えたと考えられます。

アルデルの生涯に関する記録は残念ながら多くは残されていませんが、著名なクラヴサン奏者・作曲家であるジャン・シャンピオン・ド・シャンボニエールに師事したことが知られています。彼はその才能を買われ、フランス宮廷で非常に高く評価されました。リュート奏者のポリオンと共に、毎週のようにルイ14世のために御前演奏を披露する機会も与えられています。同時代の音楽家ジャン・ル・ガロワは、1680年の私信の中で、アルデルの作品が「長い間王宮の、とりわけ国王自身の楽しみであった」と記しており、ルイ14世が彼の音楽を聴くことに「格別の喜びを見出した」と伝えています。

アルデルは、師であるシャンボニエールの様式を極めて完璧に習得した演奏家、作曲家として知られ、シャンボニエール自身の「最も優れた弟子」と称されました。彼の音楽は、師の芸術性の正統な継承者と見なされていたのです。

ルイ14世の弟であるオルレアン公フィリップ1世にも仕えました。公爵家の楽師となり、公妃アンリエット・ダングルテールの公式演奏家を務めたほか、公女たちにクラヴサンを教える教師も務めました。宮廷内外でその技量を広く認められていたことがうかがえます。

しかし、その輝かしいキャリアは突然終わりを迎えます。アルデルは1678年3月、わずか35歳という若さでこの世を去りました。結婚歴はなく、彼の遺産は1642年生まれの姉妹フランソワーズが相続しました。遺産目録からは、大型クラヴサン1台、スピネット1台といった鍵盤楽器に加え、ヴィオールやリュートといった多数の弦楽器とそのケースが含まれていたことが分かります。これは、彼が多方面にわたる楽器に関心を持ち、豊かな音楽生活を送っていたことを示唆しています。

作曲家としては、アルデルは師シャンボニエールによって基礎が築かれたクラヴサン楽派の、黎明期を担った一人と位置づけられます。ルイ・クープラン、ジャン＝アンリ・ダングルベール、ニコラ・ルベーグといった同世代の重要な作曲家たちと共に、フランスにおけるクラヴサン音楽の発展に貢献しました。彼の弟子としては、フルリーという人物の名のみが伝わっています。

残念ながら、アルデルの作品は生前に出版されることはありませんでした。今日、彼の作品として確認できるのは、わずか8曲にすぎません。これらの貴重な楽曲は、『ボーアン写本』やフランス国立図書館に所蔵されている『ド・ラ・ピエール嬢の写本』といった、当時の手稿譜の中に散逸した形で伝えられています。

現存する8曲の内訳は、リュートのためのクーラントが1曲（これはクラヴサン曲が原曲であった可能性も指摘されています）、クラヴサンのためのガヴォットが1曲、そして《クラヴサン組曲ニ短調》全6楽章です。現存するクラヴサン曲はどれも非常に質の高い音楽であり、そこからは、恩師シャンボニエールが確立した作曲技法を完全に会得していたことがうかがえます。アルデルは、特にシャンボニエール譲りの鋭敏な旋律感覚と、より発展させたバス声部の書法を組み合わせることで、和声的な構造を強固にし、一層先進的な響きを追求していました。

《クラヴサン組曲ニ短調》は、アルマンド、3曲のクーラント、サラバンド、ジーグという典型的な舞曲の配列で構成されています。この組曲は、楽章間が途切れなく演奏される、初期の典型的な「通作された」フランス組曲の形式を示す例の一つとして、音楽史的に重要な位置を占めています。

短い生涯であったにもかかわらず、ジャック・アルデルはシャンボニエールの正統な後継者としてフランス宮廷で高い評価を得、少なからず残された作品は、バロック初期フランスのクラヴサン音楽の発展を示す貴重な資料となっています。彼の音楽は、その時代の洗練された趣味と、鍵盤楽器の可能性を探求する作曲家たちの努力を今に伝えています。

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