ジャック・シェパード

18世紀ロンドンの影のヒーローにして天才脱獄王：ジャック・シェパード

ジャック・シェパード(1702年3月4日-1724年11月16日)は、18世紀初頭のロンドンを舞台に数々の犯罪を犯し、その大胆な脱獄劇で知られる伝説的な窃盗犯です。大工の父を持つ彼は、当初は職人を目指していましたが、不良仲間と関わるようになり、やがて空き巣や窃盗に手を染めます。

彼の名は、類まれな脱獄テクニックによって広く知られることとなります。聖ジャイルズ監獄からの最初の脱獄は、天井の木材に穴を開けるという大胆な方法でした。その後、彼はロンドンの悪名高いニューゲート監獄から少なくとも3回も脱獄を繰り返します。

1度目の脱獄では、手錠を破り、壁に穴を開け、シーツや毛布をロープ代わりにして脱出しました。2度目には、既に死刑判決を受けていたにも関わらず、訪問者との間仕切り窓から脱走するという離れ業を演じます。3度目には、脱獄を防ぐため鎖で繋がれ、窓のない部屋に監禁されていたにも関わらず、釘で鎖の鍵を開け、煙突の鉄棒を切り出し、壁を破壊して脱出。なんと毛布を使って近くの家の屋根に降り立ったのです。

驚くべきことに、3度目の脱獄からわずか2週間後、彼は再び逮捕されます。しかし、シェパードは最後の抵抗を試みます。絞首台へ連行される際、隠していたペンナイフで縄を切ろうとしましたが、看守に見つかり失敗。タイバーンで処刑され、セント・マーチンズ・イン・ザ・フィールド教会の墓地に埋葬されました。

シェパードの繰り返し逮捕劇は、当時の犯罪王にして官憲であるジョナサン・ワイルドの逮捕に繋がったという興味深い事実もあります。ワイルドはシェパード逮捕に多大な貢献を果たした人物でした。シェパードの犯罪行為と大胆な脱獄劇は、イギリスの犯罪史において特異な存在感を放ち続けています。

彼の生涯は、数々のフィクション作品にインスピレーションを与えてきました。その大胆な生き様は、人々の想像力を掻き立て、様々な形で創作に反映されています。

シェパードの生涯を題材とした作品例：

『ベガーズ・オペラ』(1728年、ジョン・ゲイ)：シェパードをモデルにしたマクヒースが登場。
『三文オペラ』(1928年、ベルトルト・ブレヒトとクルト・ヴァイル)：こちらもシェパードをモデルにしたマクヒースが登場。
『Jack Sheppard the House-breaker』(1825年、W.T.モンクリフ)：シェパードの生涯を描いたメロドラマ。
『Jack Sheppard』(1839年、ウィリアム・ハリソン・エインズワース)：シェパードの生涯を描いた小説。同年には、この小説を原作とした舞台劇も上演されました。
『Where's Jack?』(1969年、イギリスのテレビドラマ)：ジェームズ・クラヴェル監督、トミー・スティール主演。
『The Thieves' Opera』(1999年、ルーシー・ミラー著)：シェパードにインスパイアされた小説。

これらの作品は、シェパードという人物像を様々な角度から捉え、その魅力と謎を後世に伝えています。彼の生涯は、単なる犯罪史の一コマではなく、時代を反映したドラマであり、ロマンと現実が複雑に絡み合った物語として、人々を惹きつけてやまないのです。シェパードの伝説は、これからも語り継がれていくことでしょう。

もう一度検索