ジョン・ゲイ

ジョン・ゲイ：18世紀イギリス文壇を彩った詩人・劇作家

ジョン・ゲイ（1685年6月30日-1732年12月4日）は、イギリスの詩人、劇作家として知られています。その名声を不動のものとしたのは、1728年に発表されたバラッド・オペラ『ベガーズ・オペラ（乞食オペラ）』です。この作品はヨハン・クリストフ・ペープシュ作曲の音楽が加えられ、マクヒースやポリー・ピーチャムといった登場人物は、広く人々の記憶に刻まれることとなりました。

生涯：ロンドンと地方を繋ぐ人生

ゲイはイングランドのバーンスティプルに生まれ、地元のグラマースクールで教育を受けました。その後ロンドンで絹織物商の見習いとなりますが、サミュエル・ジョンソンによると、その厳しい労働環境に嫌気がさし、故郷に戻ったとされています。伯父の元に身を寄せた後、再びロンドンへ。

転機となったのは、1713年に発表した『Rural Sports』でアレキサンダー・ポープに作品を献呈したことでした。この出会いが、二人の生涯にわたる友情の始まりとなりました。ポープの後押しもあり、1714年にはイングランドの田園生活を描いたパストラル連作『The Shepherd's Week』を発表。この作品は、当時の文壇で注目を集めていたアンブローズ・フィリップスの作品を風刺的に批判する意図もありましたが、イングランド地方の若者たちの滑稽な描写は、それ自体が魅力的な作品となっています。

ジョナサン・スウィフトの支援により、ゲイは一時的に宮廷関係の職に就く機会を得ましたが、アン女王の崩御により、その機会は失われます。その後も、舞台作品『What d'ye call it?』（1715年）、ロンドンの街並みをユーモラスに描いた詩『Trivia, or the Art of Walking the Streets of London』（1716年）など精力的に作品を発表。しかし、『Three Hours after Marriage』（1717年）は失敗作に終わるなど、成功と失敗を繰り返しながら創作活動を続けます。

多数のパトロンに支えられながら、ゲイは創作活動を続けました。しかし、1720年の南海泡沫事件で多額の損失を被り、大きなショックを受けたとされています。それでも、友人たちの温かい支援を受け続けました。

1727年にはウィリアム王子に『Fifty-one Fables in Verse』を献呈。宮廷への仕官の機会もありましたが、屈辱的な条件であったため、辞退しています。

『ベガーズ・オペラ』の成功と政治的弾圧

ゲイの代表作である『ベガーズ・オペラ』は、当時の政権を痛烈に風刺した作品です。サー・ロバート・ウォルポールをモデルにしたとされる登場人物や、社会の闇を巧みに描いたその内容は、大きな反響を呼び、62夜ものロングラン公演を記録しました。しかし、その成功の裏には、政治的な弾圧もありました。続編『ポリー』の上演は、ウォルポールの圧力によって禁止されてしまいます。しかし、この弾圧はかえって『ポリー』の注目度を高め、ゲイは商業的な成功を収めました。

クイーンズベリ公爵夫妻はゲイを献身的に支援し続け、ゲイは公爵邸で晩年を過ごしました。1732年12月4日、ゲイは亡くなり、ウェストミンスター寺院に埋葬されました。墓碑銘はアレキサンダー・ポープによって書かれたと伝えられています。

代表作

ゲイの代表的な作品には、以下のものがあります。

The Present State of Wit（1711年）
The Rural Sports（1713年）
The Shepherd's Week（1714年）
The What D'ye Call It（1715年）
Trivia, or The Art of Walking the Streets of London（1716年）
エイシスとガラテア（1718年）
Poems on Several Occasions（1720年）
Fifty-one Fables in Verse（1727年）
ベガーズ・オペラ（乞食オペラ、The Beggar's Opera、1728年）
Polly（1729年）
Achilles（1733年）
The Distress'd Wife（1734年）
* Fables（1738年）

ジョン・ゲイは、その人生と作品を通して、18世紀イギリス文壇に大きな足跡を残した重要な作家と言えるでしょう。彼の作品は、現代においてもそのユーモアや社会風刺、人間観察の深さから、高い評価を受けています。

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