ジャンク (船)

ジャンク（艦船の一形式）

ジャンク（戎克、英: Junk）は、中国に起源を持つ独特の船舶形式で、主に木造の帆船として知られる。この船は古くから利用されてきたが、19世紀になると蒸気船の普及によって実用性は減少していった。しかし、現在でも観光資源として一部地域で利用されており、その特異なデザインは絵画や写真などの芸術作品の題材として広く評価される。

名前の由来

ジャンクという名前は、中国語の「船（チュアン）」が、マライ語の「jōng」に転訛し、さらにそれがスペイン語やポルトガル語の「junco」（イネ科の植物）に由来するとされる。一方で、14世紀の旅行者イブン・バットゥータの『大旅行記』では、中国船が「ザンク」として詳述されており、15世紀の鄭和の船団も同様に呼ばれていた。日本では「戎克」という表記も見られるが、これは当て字に過ぎず、本来は中国語で「大民船」や単に「帆船」と呼ばれることが一般的である。

船の特徴

ジャンクの特徴の一つは、船体の中央に竜骨が存在しないことである。代わりに、船体は水密隔壁で区切られ、多数の梁によって支持されている。この構造によって、ジャンクは喫水の浅い海域でも航行しやすく、耐波性にも優れている。また、風上への切り上り性も高く、横方向に挿入された割り竹の帆が功を奏している。風に対する安定性も高く、突風を受ける際には迅速に帆を降ろせる仕組みになっている。

船舶としての進化を遂げてきたジャンクだが、他の西洋の船と違い、深い船倉を持たないために、横幅が広がるデザインに変化していった。それでも、進化の過程で多様なジャンクが製造され、大型化していったことで多くの目的に対応することが可能になった。

運用の歴史

ジャンクの運用は、宋代以降急速に発展した。小型から大型のものまで存在し、450〜1300トン程度のものが耐波性に優れた外洋航行用として用いられた。特に10〜18世紀の大型ジャンクは600〜2000トンの容量を持ち、交易活動に多く使われた。これらの船舶の維持は高額であり、個人が全てを賄うのは難しいため、出資者によるパートナーシップが一般的であった。船長は共同出資者を代表し、航海と取引を一手に引き受けた。

船員たちも多様な職能と役職に分かれており、その中には会計係や、航海長、舵係長など多くの役割が存在した。明代には、鄭和に率いられた遠征船団が活躍し、アフリカやアラビア半島まで到達したことにより、海洋交易が大きな発展を遂げた。

日本とジャンク

日本においても、ジャンクは「唐船」と呼ばれ、特に朱印船貿易が盛んだった近世初期には大変活躍していた。さらに、琉球王国でも中国への使者を運ぶためのジャンクが運用され、技術の蓄積と共に自前での修理や建造が行えるようになった。

例えば、イギリス海軍の造船技師サミュエル・ベンサムは、1782年にシベリア経由で中国に渡り造船技術を学んだ後、ヨーロッパに戻り防水隔壁の導入を提唱した点も見逃せない。ジャンクはその歴史的素晴らしさにより、今もなおアジアの海で語り継がれる重要な文化遺産となっている。

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