ジャン＝ジョルジュ・オリオール

ジャン＝ジョルジュ・オリオール（1907年1月8日 - 1950年4月2日）は、フランスの映画界において、プロデューサー、脚本家、雑誌編集者、批評家として多岐にわたる才能を発揮した人物です。本名はジャン・ユオといい、映画史に大きな足跡を残しました。

先駆的な活動

パリで生まれたオリオールは、早くから映画への情熱を抱いていました。彼はまず、映画雑誌『デュ・シネマ』を創刊。この雑誌には、後に映画監督となるジャック・ブリュニュス、脚本家のルイ・シャヴァンス、作家のポール・ジルソンらが参加しました。1928年、21歳でオリオールは自ら編集長となり、雑誌名を『ラ・ルヴュ・デュ・シネマ』と改称。この雑誌は1931年まで刊行されました。

1933年、オリオールは26歳で脚本家としてのキャリアをスタートさせます。ピエール・ビヨン監督の『Le Fakir du Grand Hôtel』でダイアローグを担当し、マルセル・レルビエ監督の『L'Épervier』では脚色とダイアローグを手掛けました。この作品は、後の名優ジャン・マレーのデビュー作としても知られています。その後も、マルク・アレグレ、マックス・オフュルス、ジャック・ターナーといった名監督たちの作品で脚本を担当し、その才能を発揮しました。

戦後の活動と「呪われた映画祭」

第二次世界大戦後、オリオールは1946年にジャック＝ドニオル・ヴァルクローズと共に休刊していた『ラ・ルヴュ・デュ・シネマ』を復刊させました。さらに、1949年にはアンドレ・バザン、アレクサンドル・アストリュック、ジャン・コクトーらと共にシネクラブ「オブジェクティフ49」を結成。同年、ビアリッツで「第一回呪われた映画祭」を開催し、映画文化の復興に尽力しました。

しかし、1950年4月2日、オリオールは交通事故で急逝。43歳という若さでした。彼の死後、『ラ・ルヴュ・デュ・シネマ』は廃刊となり、「第二回呪われた映画祭」は開催されたものの、オリオールの不在は求心力を失わせ、「オブジェクティフ49」も解散しました。

没後の影響

オリオールの死は、映画界に大きな空白をもたらしましたが、その影響は決して小さいものではありませんでした。彼が築き上げた批評誌、映画祭、シネクラブは、その後の映画運動の重要な要素となりました。1951年に創刊された『カイエ・デュ・シネマ』は、ヌーヴェルヴァーグという新たな映画の波を生み出す原動力となり、オリオールの活動は、その大きな推進力となったのです。

また、『ラ・ルヴュ・デュ・シネマ』に執筆していたロッテ・アイスナーは、著書『L'Ecran Demoniaque デーモン的スクリーン』をアンドレ・バザン、アンリ・ラングロワと共にオリオールに捧げています。ジャン＝リュック・ゴダールの映画『ゴダールの映画史』には、オリオールや『ラ・ルヴュ・デュ・シネマ』の執筆者たちの名前を呼びかけるシーンがあります。これらの事実は、オリオールが映画界に与えた影響の大きさを物語っています。

主な脚本作品

『Le Fakir du Grand Hôtel』（1933年） - ダイアローグ
『L'Épervier』（1933年） - 脚色・ダイアローグ
『Les Filles de la concierge』（1934年） - 脚本
『乙女の湖』（1934年） - 脚本
『ディヴィーヌ』（1935年） - コンテ
『背信』（1937年） - 脚本
『佛蘭西座』（1938年） - 脚本
『情熱のバラ』（1939年） - 脚色
『Napoli che non muore』（1939年） - 脚本
『Terra di fuoco』（1939年） - 脚本
『Validità giorni dieci』（1940年） - 脚本
『名誉なるカトリーヌ』（1943年） - 脚色・ダイアローグ
『L'Homme sans nom』（1943年） - 脚色・ダイアローグ
『Le Carrefour des enfants perdus』（1944年） - 脚色
『Fabiola』（1949年） - 脚本
『Ce siècle a cinquante ans』（1951年） - コメンタリー執筆

ジャン＝ジョルジュ・オリオールは、映画史において、その情熱と先見の明によって、多くの人々に影響を与えました。彼の名前は、フランス映画の黄金時代を築いた偉大な人物の一人として、永く記憶されるでしょう。

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