ジャン＝ベルナール・ムヌー

ジャン＝ベルナール・ムヌー：スイスが生んだ映像の巨匠

ジャン＝ベルナール・ムヌー（Jean-Bernard Menoud）は、1954年2月21日にスイスのビュルで生まれました。彼は撮影監督、映画監督、テレビ演出家として、映像の世界で多岐にわたる才能を発揮しています。特に、ジャン＝リュック・ゴダール監督の作品における撮影監督としての活躍は、彼のキャリアにおいて重要な位置を占めています。

若き日のムヌー

ムヌーは、ヴォー州ヴヴェにあるヴヴェ写真学校で学びました。同校の卒業生には、映画監督のフランシス・ロイセールやイヴ・イェルサンがいます。写真学校卒業後、2年間写真家として活動した後、1977年にジュネーヴのテレヴィジオン・スイス・ロマンド（TSR）に入局し、撮影部カメラマンとしてキャリアをスタートさせました。1978年には演出部に異動し、映像制作の分野で活動の幅を広げていきます。

ゴダールとの出会い

1979年、ムヌーの人生において大きな転機が訪れます。ジャン＝リュック・ゴダールが、商業映画復帰作となる『勝手に逃げろ/人生|勝手に逃げろ_人生』の撮影を開始するにあたり、ムヌーはフランスの撮影監督ウィリアム・リュプチャンスキー、スイスの若手撮影監督レナート・ベルタの助手として、映画の現場に初めて足を踏み入れました。この作品には、ムヌーが所属するテレヴィジオン・スイス・ロマンドも共同出資していました。この経験を通じて、ムヌーは映画制作の現場を肌で感じ、その後のキャリアを大きく左右する出会いを経験します。

その後、ゴダール監督の長編映画『パッション』（1980年）では、ベテラン撮影監督ラウール・クタールの傍らでビデオ記録を担当し、1981年には、ゴダール監督の短編『フレディ・ビュアシュへの手紙』で、27歳という若さで撮影監督として独り立ちしました。この作品での成功がきっかけとなり、ムヌーはゴダール組の常連となり、『カルメンという名の女』（1982年）ではラウール・クタールと共同で撮影監督を務め、『ゴダールのマリア』（1983年）では、ゴダール監督の『こんにちは、マリア』でジャック・フィルマンと、ミエヴィル監督の『マリアの本』では、フィルマンに加えてカロリーヌ・シャンプチエと共に撮影を担当しました。

映画監督としての挑戦

1984年、ムヌーはミシェル・ステー監督の『Signé Renart（契約されたルナール）』で、長編劇映画の撮影監督として本格的に一本立ちを果たします。その後も、ミエヴィル監督の短編や長編『私の愛するテーマ』（1988年）を手がけ、フランスの同世代の監督ジェラール・フロ＝クータスの作品を多く担当しました。また、1986年には、長編映画『Jour et nuit』で映画監督としてもデビューを果たします。この作品では、『ブルックリン最終出口』の著者であるヒューバート・セルビー・ジュニアと共同で脚本を執筆しました。この作品は、ムヌーが所属するテレヴィジョン・スイス・ロマンドが他の映画製作会社と共同製作したものです。

テレビ演出家としての活動

ムヌーは、テレヴィジオン・スイス・ロマンドにおいて、ルポルタージュ番組『Temps Présent』と『Viva』で多数の作品を演出しました。代表的な作品には、『Météo pour une fin de siècle』、『Nous étions amis à Vukovar』、『Butin russe dans coffre suisse』などがあります。これらの作品を通じて、彼は社会的なテーマや歴史的な出来事を、独自の視点から捉え、映像を通じて観る人に深く訴えかける作品を制作しました。

オードリー・ヘプバーンとの出会い

1991年、ムヌーはアメリカのテレビドキュメンタリー『The Fred Astaire Songbook』の撮影に参加しました。主演のオードリー・ヘプバーンが、ヴォー州トロシュナという小さな村に住んでいたことが縁で、この作品でカメラオペレーターを務めました。ヘプバーンは、この撮影の3年後に亡くなったため、ムヌーは彼女の最後の姿をカメラに収めたことになります。

ムヌーのフィルモグラフィー

ムヌーは、以下のような作品で撮影監督や監督として活躍しました。

勝手に逃げろ/人生|勝手に逃げろ_人生 (1980) - 撮影助手
パッション (1980) - ビデオ記録
フレディ・ビュアシュへの手紙 (1981) - 撮影監督
カルメンという名の女 (1982) - 撮影監督
Signé Renart（契約されたルナール） (1984) - 撮影監督
マリアの本 (1984) - 撮影監督
こんにちは、マリア (1985) - 撮影監督
Faire la fête (1986) - 撮影監督
Jour et nuit (1986) - 監督
L'Un contre l'autre (1987) - 撮影監督
私の愛するテーマ (1988) - 撮影監督
Rose ou l'ivraie en famille (1989) - 撮影監督
Man No Run (1989) - 撮影監督
La Campagne de Cicéron (1990) - 撮影監督
Après après-demain (1990) - 撮影監督
The Fred Astaire Songbook (1991) - カメラオペレーター
Peinture fraîche (1991) - 撮影監督
Le Cri du lézard (1991) - 撮影監督
* Le Jour des rois (1991) - 撮影監督


ジャン＝ベルナール・ムヌーは、スイスの映像業界を代表する人物の一人であり、その多岐にわたる活動は、映像制作に携わる人々にとって大きな刺激となっています。彼の映像作品は、観る者に深い感動と新たな発見を与え続けています。

もう一度検索