ジャン＝ミシェル・ユオン・ド・ケルマデック

ジャン＝ミシェル・ユオン・ド・ケルマデック

ジャン＝ミシェル・ユオン・ド・ケルマデック（Jean-Michel Huon de Kermadec, 1748年9月12日 - 1793年5月6日）は、18世紀末のフランス王国に仕えた海軍軍人です。ブルターニュ地方の港湾都市ブレストで生を受けました。

彼の軍人としてのキャリアは1776年に始まりました。当時、フランスは台頭するイギリスと世界各地で覇権を争っており、ケルマデックは海軍に入隊後、フランスがアメリカ合衆国の独立を支援して参戦したアメリカ独立戦争において、1778年以降、イギリス海軍との戦いの最前線に立ちました。

軍務の傍ら、彼は探検航海にも関わる機会を得ました。1785年には、後にラ・ペルーズ捜索航海の指揮官となるアントワーヌ・ブリュニー・ダントルカストーが率いる中国への航海に、副指揮官として参加しています。この経験が、その後の彼の運命を決定づけることとなります。

1788年、南太平洋を探査していたジャン＝フランソワ・ド・ラ・ペルーズ伯爵率いるフランス探検隊が突如として消息を絶ちました。この事態を受け、フランス政府は彼らの行方を捜索するための艦隊を派遣することを決定します。この捜索隊は、ケルマデックがかつて副官を務めたダントルカストー少将を総司令官とし、2隻のフリゲート艦で編成されました。この時、大佐に昇進していたケルマデックは、捜索艦の一隻であるレスペランス号（L'Espérance）の艦長に任命され、重要な役割を担うことになりました。

捜索航海は1791年9月28日、ブレストを出港して始まりました。捜索隊はまず南太平洋の島々を巡り、その後、ラ・ペルーズ隊が消息を絶ったとされる海域を中心に、ニューギニア近海からオーストラリアの西岸、南岸にかけて広範囲にわたる探検と調査を兼ねた航海を行いました。彼らは困難な航海を続けましたが、残念ながらラ・ペルーズ隊の確かな痕跡や手掛かりを見つけることはできませんでした。

長期間に及ぶ厳しい航海は、乗組員たちの健康を蝕みました。ケルマデック自身も航海の途上で結核に罹患してしまいます。病状は悪化し、捜索航海の途上、寄港していたニューカレドニア島で、彼は1793年5月6日にその生涯を閉じました。彼の死は、捜索隊にとって大きな痛手となりました。

ケルマデックの功績と、彼が参加した歴史的な捜索航海は、その名を後世に残しています。ニュージーランドの北東約1000kmに位置する火山性の島々からなるケルマデック諸島は、彼に因んで名付けられたものです。

さらに、オーストラリアのタスマニア島に自生するマキ科の針葉樹フオンマツ（Lagarostrobos franklinii、シノニム: Dacrydium franklinii）や、ニューカレドニアに固有の植物であるヤマモガシ科のケルマデシア属（Kermadecia）、そしてケルマデック諸島原産のフトモモ科オガサワラフトモモ属のMetrosideros kermadecensisなど、いくつかの植物にも彼の名前や航海が関連づけられています。

ジャン＝ミシェル・ユオン・ド・ケルマデックは、探検の途上で病に倒れましたが、その短い生涯はフランス海軍の一員として、そして偉大な航海者たちの探検を支えた人物として、世界の地理や生物の理解に貢献する一歩を記したと言えるでしょう。

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