ジャン2世・ド・リュクサンブール (リニー伯)

ジャン2世・ド・リュクサンブール：百年戦争を生き抜いた貴族の生涯と、ジャンヌ・ダルク処遇

ジャン2世・ド・リュクサンブール（1392年-1441年1月5日）は、15世紀のフランスを揺るがした百年戦争において、重要な役割を果たした貴族であり、軍人でした。ボールヴォワール領主、ギーズ伯、リニー伯を領し、その生涯は権力闘争と軍事行動、そして、歴史に名を刻む重大な決断によって彩られています。

彼はブリエンヌ伯ジャンとマルグリット・ダンギャンの息子として生まれ、父の死後、ボールヴォワール城を相続しました。百年戦争中のフランスは、アルマニャック派とブルゴーニュ派という二つの勢力が激しく対立しており、ジャン2世は兄たちと共に、イングランドとブルゴーニュ陣営に属しました。

ブルゴーニュ公ジャン・サン・プールの下で、ジャン2世はアラス代官に任命されるなど、着実に地位を高めていきました。サンリスの戦いでアルマニャック派を撃退した功績により、パリ軍事総督に任命されるなど、軍事的な才能も高く評価されました。モン＝アン＝ヴィムーの戦闘で負傷するなど、激戦を幾度となく経験し、ランドルシー包囲戦やクラヴァンといった主要な戦役にも参加しています。ベッドフォード公ジョン・オブ・ランカスターの下でシャルル7世軍からギーズを奪回し、その後ギーズ伯領を授けられるなど、軍事功績によって領地と権力を拡大していきました。1430年には、兄と共に金羊毛騎士団の会員に選出され、その地位はさらに不動のものとなりました。

ジャン2世の運命を、そして歴史の転換点を決定づけたのは、コンピエーニュ包囲戦における出来事でした。1430年5月23日、彼の従士がジャンヌ・ダルクを生け捕りにしたのです。コンピエーニュにいたシャルル7世軍に奪還される危険性を考慮し、ジャン2世はジャンヌ・ダルクを自らの居城であるボールヴォワール城に連行し、伯母と妻に監視させました。

ジャンヌ・ダルクの身柄をめぐっては、百年戦争のあらゆる陣営から身代金の申し出が殺到しました。しかし、ジャン2世の主君であるブルゴーニュ公フィリップ・ル・ボンは、同盟者であるイングランド陣営への引き渡しを要求しました。ジャン2世の伯母ジャンヌ・ド・リュクサンブールは、シャルル7世の名付け親でもあったことからジャンヌ・ダルクに同情的で、イングランドへの引き渡しに反対し、リニー伯領の相続権剥奪をちらつかせてまで甥を説得しようとしました。しかし、伯母は1430年9月18日に亡くなり、ジャン2世はイングランドへの引き渡しを決断しました。ボーヴェ司教ピエール・コーションとパリ大学の要求に応じ、1万リーヴル・トゥールノワという多額の身代金と引き換えに、ジャンヌ・ダルクをイングランドに引き渡したのです。この決断は、ジャンヌ・ダルクの生涯、そしてフランスの歴史に大きな影響を与えました。

その後もジャン2世はシャルル7世派との戦いを続け、その名声は高まり続けました。1435年には、ブルゴーニュ公と共にアラスの和約に調印し、ブルゴーニュ陣営とフランス王陣営の長く続いた争いに終止符を打ちました。

1441年、ジャン2世は死去し、カンブレー旧大聖堂に埋葬されました。1418年に結婚したモー子爵領の相続人ジャンヌ・ド・ベテューヌとの間には子供がいなかったため、彼の遺産は甥のサン＝ポル伯ルイに継承されました。興味深いことに、ジャン2世は1435年に妻の連れ子ジャンヌ・ド・マルルを甥ルイに嫁がせています。

ジャン2世・ド・リュクサンブールの生涯は、百年戦争という激動の時代を生き抜いた一貴族の物語であり、同時に、ジャンヌ・ダルクという歴史的にも重要な人物の運命に深く関与した物語でもあります。彼の決断は、フランスの歴史に大きな影を落としたと同時に、複雑で多角的な彼の立場を理解する上でも重要な要素となっています。

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