ジャーミー

ヌールッディーン・アブドゥッラフマーン・ジャーミー

ヌールッディーン・アブドゥッラフマーン・ジャーミー（1414年 - 1492年）は、ティムール朝時代のイラン（ペルシア）で活躍したスーフィーであり、卓越した詩人でした。彼の雅号「ジャーミー」は、故郷であるジャームに由来します。近世ペルシア文学が衰退に向かう時代に、ジャーミーは独自の詩風を確立し、「詩人たちの最後」「最後の詩人」と呼ばれるほどの影響力を持っていました。

生涯

ジャーミーは1414年、ホラーサーン地方のジャームで、裁判官の息子として生まれました。幼少期からスーフィズムに強い関心を抱き、後にナクシュバンディー教団に師事します。ヘラートのニザーミーヤ学院で学んだ後、サマルカンドへ留学し、神学、法学、哲学、文学など幅広い分野を修めました。サマルカンドでの留学期間は9年に及んだと言われています。

ヘラートに戻ったジャーミーは、シャー・ルフが建てた学校で教鞭を執る傍ら、スーフィズムへの探求を深めました。その名声は高まり、黒羊朝や白羊朝の君主からも注目される存在となりました。

ヘラートの支配者フサイン・バイカラの庇護を受け、アリー・シール・ナヴァーイーをはじめとする多くの文人や宗教家と交流しました。1472年にはメッカ巡礼を果たし、その途上でダマスカス、アレッポ、タブリーズなどを訪れています。生涯のほとんどをヘラートで過ごし、1492年に同地で没しました。

作品

ジャーミーは、散文と韻文の両方で作品を残しましたが、特に韻文によって名声を確立しました。彼の作品は、洗練された語法と文体、そして深い学識に裏打ちされた内容を特徴としています。スーフィーとしての精神性、学者としての知識が融合した彼の詩は、多くの人々に感銘を与えました。

代表作として知られるのは、7部構成のマスナヴィー形式の長編詩「七つの王座」です。その中でも、『ユースフとズライハー』は特に有名で、クルアーンの一節を基にした愛の物語は、多くの人々に愛されています。

「七つの王座」は、ニザーミーの「五部作（ハムセ）」に対抗して作られたと言われています。

『黄金の鎖』：哲学、倫理学、宗教について論じた作品。
『サラーマーンとアブサール』：ギリシャの物語を基にした恋物語。
『自由な民への贈物』：教訓詩。
『敬虔なる者たちへの数珠』：教訓詩。
『ユースフとズライハー』：クルアーンを基にした愛の物語。
『ライラとマジュヌーン』
* 『アレクサンダーの英知の書』：ニザーミーの作品を模倣した作品。

その他に、詩集「ジャーミー詩集」や、スーフィーの伝記集『親愛の息吹』、逸話集『春の園』などがあります。『親愛の息吹』は、文学史において貴重な資料として評価されています。

ジャーミーはまた、存在一性論の立場で書かれた論文も残しており、これらの論文は中国イスラーム思想に大きな影響を与えました。

ジャーミーの作品は、ペルシア語圏だけでなく、インドやトルコなど、非ペルシア語圏でも広く読まれ、愛されました。彼の詩はオスマン文学にも影響を与え、オスマン皇帝が彼をイスタンブールに招こうとしたという逸話も残っています。

ジャーミーは、ペルシア文学の歴史において、重要な地位を占める詩人であり、思想家です。彼の作品は、今日でも多くの人々に読み継がれ、その精神は生き続けています。

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