ジュゼッペ・ジャコーザ

ジュゼッペ・ジャコーザ（Giuseppe Giacosa, 1847年10月21日 - 1906年9月1日）は、イタリアの詩人、劇作家、そしてオペラ台本作家として名を馳せました。特に、ルイージ・イッリカとの共同作業で、ジャコモ・プッチーニのオペラ『ラ・ボエーム』、『トスカ』、『蝶々夫人』の台本を手がけたことで、その名声は不動のものとなりました。

生涯

ジャコーザは、トリノ近郊のコッレレット・パレッラ（現在のコッレレット・ジャコーザ）で、判事の息子として生まれました。トリノ大学で法学を修めた後、当初は父親の跡を継ぐことを考えていましたが、1873年に発表した風刺詩『チェスの一局』が好評を博したことをきっかけに、文学の道へと進むことを決意します。

彼は、アッリーゴ・ボーイトなどの文壇の仲間たちと交流を深め、簡潔で洗練された舞台劇を制作することで名声を確立しました。これらの作品の多くは、当時のピエモンテ地方の富裕層の生活を題材としたもので、エミール・ゾラの自然主義やヘンリック・イプセンの影響が色濃く見られます。1888年から1894年の間には、ミラノ音楽院で文学と演劇の教鞭を執り、後進の指導にも尽力しました。

1894年、ジャコーザのキャリアは新たな展開を迎えます。楽譜出版業者ジューリオ・リコルディの仲介により、新進気鋭のオペラ作曲家ジャコモ・プッチーニ、そして台本作家ルイージ・イッリカとの共同制作が始まったのです。この3人によるコラボレーションは、『ラ・ボエーム』（1896年初演）、『トスカ』（1900年初演）、『蝶々夫人』（1904年初演）という、オペラ史に残る傑作を生み出すことになりました。

この共同制作において、ジャコーザが主に担った役割は、イッリカが作成した筋立てと散文形式の会話を、格調高い韻文に書き直すことでした。すでに劇作家として確固たる地位を築いていたジャコーザにとって、この作業は必ずしも楽しいものではなかったかもしれません。また、題材によっては、暴力的な描写を含む『トスカ』のように、彼の趣味に合わない場合もありました。しかし、ジャコーザは常に誠実に仕事に取り組み、その才能を余すところなく発揮しました。

ジャコーザは温厚な性格で知られ、その穏やかな容貌から「ブッダ」という愛称で親しまれていました。彼は、短気なイッリカと、同じく激しい気性で台本作家を酷使する傾向があったプッチーニの間で、しばしば発生する衝突を和らげる役割も果たしていました。リコルディがジャコーザをこのチームに引き入れたのも、そのような彼の性格を期待してのことだったのでしょう。実際に、1906年にジャコーザが亡くなった後、プッチーニとイッリカは共同で新たな作品を生み出すことができず、ジャコーザの存在が、彼らの協調関係においていかに重要であったかが伺えます。

ジャコーザの文学的才能と、温和で調停的な人柄は、オペラ史に残る数々の傑作を生み出す上で、欠かせない要素であったと言えるでしょう。

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