ジュリアおたあ

ジュリアおたあ：信仰を貫いた異国の女性

ジュリアおたあ（生没年不詳）は、安土桃山時代に生きた朝鮮人女性です。文禄・慶長の役で日本に連行され、キリスト教に改宗。洗礼名「ジュリア」と日本名「たあ」から「ジュリアおたあ」として知られています。

波乱の生涯

出自については諸説あり、戦乱で家族を失った女性とも、李氏朝鮮の両班の娘とも言われています。詳しい生い立ちや家系は不明ですが、彼女の弟と思われる人物が、毛利家の家臣として日本で家系を築き、その家系は現代まで続いています。萩博物館には、おたあの書状や、弟が徳川家康から拝領したとされる葵の御紋入りの小袖が所蔵されています。研究者の分析から、おたあは貴族階級の出身だった可能性が指摘されています。

文禄の役で平壌近郊にて保護されたおたあは、キリシタン大名の小西行長に引き渡され、夫妻のもとで育てられました。「オプタ（無い）」という言葉が転じて「おたあ」と呼ばれるようになったという説があります。行長夫人の教育を受け、薬草の知識を深めたと伝えられています。

関ヶ原の戦いで小西行長が敗れると、ジュリアは徳川家康に見出され大奥に召し上げられます。伏見城で御物仕として働きながら、信仰を続け、他の侍女たちをキリスト教に導いたとされています。宣教師は彼女を「茨の中の薔薇」と評しました。

その後、家康と共に江戸城、駿府城へと移り住みますが、キリスト教禁教令が出されると、棄教を拒否。家康の側室になることも拒んだため、伊豆諸島へ流刑となりました。流刑地でも信仰を捨てず、弱者や病人の保護、若い流人の教化に尽力し、島民に貢献しました。

流刑、そして消息不明へ

3度の遠島処分を受けた背景には、家康への恭順を拒み続けたことや、新島で侍女仲間と修道生活を送ったことなどが考えられます。1622年の記録には、おたあが大坂に移住し、神父の援助を受けていることが記されていますが、その後の消息は不明です。

没後の慰霊

1950年代に神津島の郷土史家が、島にある供養塔がおたあの墓であると主張したことから、神津島で没したという説が広まりました。現在も神津島では、毎年慰霊祭が行われています。韓国のカトリック殉教地にはかつておたあを記念する石碑が建てられましたが、その後の研究により撤去され、真相解明を待つことになりました。

上智大学教授の調査により、ローマやロンドンの記録所からジュリアに関する資料が発見されています。1975年には、教皇の代理が神津島を訪れ、ジュリアを聖人と認めるなど、その生涯は現代においても記憶されています。

関連情報

駿府時代には灯篭を作らせ瞑想していたと言い伝えられており、「キリシタン灯篭」は宝台院に移されています。彼女を題材とした音楽、小説、映画、ミュージカルなども制作されています。

ジュリアおたあは、激動の時代に信仰を貫き、人々に尽くした女性として、今もなお多くの人々の心に残り続けています。

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