宝台院

宝台院：徳川家ゆかりの寺院

静岡市葵区常磐町に位置する宝台院は、浄土宗に属する由緒ある寺院です。金米山龍泉寺という山号と寺号を持ち、本尊は阿弥陀如来です。

徳川家との深い繋がり

宝台院は、駿府（現在の静岡市）における徳川家の菩提寺として知られています。江戸時代には、江戸幕府から朱印状（朱印三百石）が与えられ、住職が江戸城に登城する際には十万石の格式が与えられるなど、幕府からの厚い庇護を受けていました。

特に、二代将軍徳川秀忠が現在地に移し、大伽藍を建立したことが、宝台院の歴史において大きな転換点となりました。増上寺とともに徳川家の菩提寺として重要な役割を果たし、多くの塔頭や末寺を擁し、駿河国における中心的な寺院の一つとなりました。浄土宗の寺格においても、引込紫衣地七箇寺の一つに数えられています。

徳川家康の側室で、秀忠の生母である西郷局（お愛の方）の墓が境内にあるほか、家康の身代わりとなって矢を受けたという逸話を持つ、快慶作の「白本尊阿弥陀如来」（国重要文化財）も安置されています。この白本尊阿弥陀如来は、徳川家康にとって非常に重要な守り本尊であったと伝えられています。

また、徳川秀忠の正室であるお江の方の墓と御霊屋もかつては宝台院にありましたが、現在は増上寺に合祀されています。家康の墓所である久能山東照宮の麓には宝台院別院があり、徳川家家臣の榊原照久の墓所となっています。

歴史の舞台として

宝台院の歴史は古く、1507年（永正4年）、鎌倉光明寺八世祐崇によって駿府に龍泉寺として創建されました。1589年（天正17年）には、西郷局がここに葬られ、1628年（寛永5年）には西郷局の戒名が「宝台院殿一品大夫人松誉定樹大禅定尼」となり、寺号も龍泉寺から宝台院と改められました。この頃、増上寺とともに徳川家の菩提寺としての地位を確立しました。

大政奉還後、1868年（慶応4年）には、江戸城開城後に徳川慶喜が水戸・弘道館から宝台院に移り、謹慎生活を送りました。慶喜は1869年（明治2年）9月に謹慎が解かれるまで、この地で過ごしたのです。その後、明治時代には、静岡高等英華学校が境内に設立されたり、日露戦争時にはロシア兵の捕虜収容所となったりと、様々な歴史的出来事を経験してきました。1940年（昭和15年）の静岡大火では、旧国宝の本堂が焼失するという大きな損失を被り、戦後の土地区画整理により境内地も大幅に縮小されました。しかし、1628年（寛永5年）に徳川秀忠によって築造された山門は、1918年（大正7年）に菊川市中内田の応声教院に移築されたため、現在も現存しています。

貴重な文化財

宝台院には、数多くの貴重な文化財が伝えられています。国指定重要文化財である木造阿弥陀如来立像をはじめ、徳川家康自画像（市指定重要文化財）、西郷の局の墓（市指定重要文化財）などが有名です。その他にも、徳川家康や秀忠、家光、家綱、慶喜といった徳川将軍家の書画や遺品、西郷局の肖像画、古田織部作のキリシタン灯篭などが宝台院に保管されています。これらの文化財は、日本の歴史、特に徳川幕府の歴史を知る上で貴重な資料となっています。

アクセス

宝台院は、JR東海東海道本線静岡駅から徒歩8分、またはしずてつジャストラインバス藁科線「宝台院」バス停から徒歩2分の場所に位置しています。また、久能山東照宮の麓には別院があります。

宝台院は、歴史と文化、そして貴重な文化財を今に伝える、静岡を代表する寺院の一つと言えるでしょう。

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