ジョアシャン・デュ・ベレー

ジョアシャン・デュ・ベレー：フランス・ルネサンスを彩った詩人

ジョアシャン・デュ・ベレー（1522年頃 - 1560年1月1日）は、16世紀フランスを代表する詩人であり、ピエール・ド・ロンサールとともにプレイヤード派の基礎を築きました。彼の生涯は、フランス・ルネサンスの息吹と、詩への情熱に満ち溢れていました。

生涯：孤独な少年時代から詩人への道

デュ・ベレーは、アンジュー地方の古くからの貴族の家に生まれました。しかし、幼くして両親を亡くし、孤独な少年時代を送ります。ロワール川のほとりで夢想に耽る日々の中で、彼は詩作への情熱を育んでいきました。人生の転機となったのは、ピエール・ド・ロンサールとの出会いです。共に詩人になることを夢見た二人は、パリのコレージュ・ド・コクレで学び、古代の詩やイタリアの詩に触れながら、新たな詩の創造を目指しました。

プレイヤード派の結成と『フランス語の擁護と顕揚』

ロンサールとデュ・ベレーは、ジャン・ドラの指導のもと、友人たちと詩人グループ「ブリガード」を結成します。このグループは後にプレイヤード派として発展し、フランス語による新しい詩の創造を目指しました。デュ・ベレーは、グループの理念を体現した宣言書『フランス語の擁護と顕揚』を執筆し、ラテン語に代わるフランス語の可能性を訴え、詩のジャンルの開拓と語彙の豊穣を提唱しました。

ローマ滞在と『哀惜詩集』

デュ・ベレーは聖職者となり、ノートルダム・ド・パリの参事会員となります。その後、彼はローマに滞在し、枢機卿の秘書を務めます。しかし、そこで目にしたのは、かつての栄光を失い、退廃したローマの姿でした。この経験は、彼の心に深い失望と後悔の念を刻み込み、帰国後に出版された『哀惜詩集』には、その心情が痛切に表現されています。彼は、ソネット形式を用いて、ローマへの憧憬と幻滅、故郷への想いを繊細かつ力強く描き出しました。

急逝とノートルダム大聖堂での棺の発見

帰国後、デュ・ベレーは精力的に詩作活動を続けましたが、ローマでの疲労がたたり、1560年に急逝しました。彼はノートルダム大聖堂に埋葬されましたが、その正確な場所は不明でした。しかし、2019年のノートルダム大聖堂の火災後の修復作業中に、教会の床下から棺が発見され、その後の調査の結果、2024年にこの遺骸がデュ・ベレーのものであると結論付けられました。棺の中の遺骸は、頭蓋骨の形状や、剣や槍の使用の痕跡から、彼が貴族であり、武術に長けていたことを示唆していました。また、結核による慢性髄膜炎が死因であったことも判明しました。この発見は、彼の生涯と作品に対する新たな光を当てるものとなりました。

主な作品

ル・マン市にて（1547年）
オリーブ（1549年）
フランス語の擁護と顕揚（1549年）
ローマの古跡（1558年）
* 哀惜詩集（1558年）

ジョアシャン・デュ・ベレーは、フランス・ルネサンスの精神を体現した詩人であり、その作品は、今日においても多くの人々に愛されています。彼の詩は、人間の感情の機微を捉え、普遍的なテーマを追求しており、時代を超えて読者の心に響きます。

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