ジョルジュ・セデス
ジョルジュ・セデス（George Cœdès、1886年8月10日 - 1969年10月2日）は、フランスの著名な東洋学者であり、東南アジアの歴史、特にカンボジアとタイの碑文研究、そしてシュリーヴィジャヤ王国の再発見において重要な役割を果たしました。1929年から1947年までの長きにわたり、フランス極東学院の院長を務め、この分野における研究を大きく推進しました。
セデスはパリでユダヤ系ハンガリー人の家庭に生まれました。幼い頃から東洋学に強い関心を持ち、18歳という若さでカンボジアのクメール語とサンスクリットの碑文に関する論文を発表しました。ベルリン大学で学んだ後、パリのリセ・コンドルセでドイツ語教師として働きながら、アルフレッド・フーシェの指導を受け、1911年にはアンコール・ワットのレリーフ研究で高等研究実習院の学位を取得しました。
1911年、セデスはハノイのフランス極東学院に招待され、1915年から同校のインドシナ文献学教授に就任しました。その後、1918年にはシャム（現在のタイ）の国立図書館長、1927年からはシャム王立研究所の事務局長を歴任するなど、研究活動だけでなく、行政面でも重要な役割を果たしました。
フランス極東学院の支援のもと、1918年から1926年にかけて、セデスはタイ、クメール、モンの古代碑文の研究に没頭しました。この研究を通じて、東南アジアの古代史における貴重な知見を数多く得ることができました。
1929年からはフランス極東学院の院長に就任し、1947年の退官までその職を務めました。第二次世界大戦中には、ヴィシー政権がユダヤ人の職業を制限する法律を制定しましたが、セデスは政権にとって有益な人物と見なされ、例外的にその影響を受けずに済みました。戦後、セデスはフランスに帰国し、エヌリー美術館のキュレーターとして、1969年に亡くなるまでその職にありました。また、フランス海外領国立学校、高等自然人類学学校、東洋言語学校などでも教鞭を執りました。
1934年には碑文・文芸アカデミーの通信会員に、1948年にはフランス海外領科学アカデミーの会員に、1958年には碑文・文芸アカデミーの正会員に選出されました。1964年にはアジア協会の会長に就任するなど、国内外で数々の栄誉に輝きました。
セデスはフランス極東学院の機関誌「Bulletin de l'École Française d'Extrême-Orient（BEFEO）」に多数の論文を発表しました。特に1918年の論文では、碑文に記されたシュリーヴィジャヤが唐代の中国文献に現れる「室利仏逝」に相当することを指摘し、忘れられていたシュリーヴィジャヤ王国を再発見しました。
「Le royaume de Çrivijaya」 (BEFEO 18 (6), 1918)：シュリーヴィジャヤ王国の再発見に貢献した重要な論文。
「Articles sur le pays khmer」 (1989,1992)：1911年以降にBEFEOに発表したカンボジア研究論文をまとめたもの。
「Inscriptions du Cambodge」 (1937-1966)：全8巻からなるカンボジア碑文の収集、解読、翻訳に関する大著。
「Histoire ancienne des États hindouisés d'Extrême-Orient」 (1944)：東南アジアの16世紀までの歴史を整理した著作。後に「Les états hindouisés d'Indochine et d'Indonésie」として改訂版が出版。
日本語訳: 『東南アジア文化史』（山本智教訳、大蔵出版、1989年）
その他にも、以下のような重要な著作があります。
「Documents sur l'histoire politique et religieuse du Laos occidental」 (BEFEO 25 (1/2), 1925)：ラオス西部の政治と宗教に関する歴史的な文書。
「Pour mieux comprendre Angkor」 (1943)：アンコール遺跡を理解するための著作。
日本語訳: 『アンコール遺跡：壮大な構想の意味を探る』（三宅一郎訳、連合出版、1990年、改訂版1993年）
「Les peuples de la péninsule indochinoise - civilisations」 (1962)：インドシナ半島の文明に関する著作。
日本語訳: 『インドシナ文明史』（辛島昇・内田晶子・桜井由躬雄訳、みすず書房、1969年、新版1980年）
ジョルジュ・セデスの研究は、東南アジアの歴史と文化に対する理解を深める上で、不可欠な貢献を果たしました。彼の業績は、今もなお多くの研究者や学生に影響を与え続けています。
生涯
セデスはパリでユダヤ系ハンガリー人の家庭に生まれました。幼い頃から東洋学に強い関心を持ち、18歳という若さでカンボジアのクメール語とサンスクリットの碑文に関する論文を発表しました。ベルリン大学で学んだ後、パリのリセ・コンドルセでドイツ語教師として働きながら、アルフレッド・フーシェの指導を受け、1911年にはアンコール・ワットのレリーフ研究で高等研究実習院の学位を取得しました。
1911年、セデスはハノイのフランス極東学院に招待され、1915年から同校のインドシナ文献学教授に就任しました。その後、1918年にはシャム（現在のタイ）の国立図書館長、1927年からはシャム王立研究所の事務局長を歴任するなど、研究活動だけでなく、行政面でも重要な役割を果たしました。
フランス極東学院の支援のもと、1918年から1926年にかけて、セデスはタイ、クメール、モンの古代碑文の研究に没頭しました。この研究を通じて、東南アジアの古代史における貴重な知見を数多く得ることができました。
1929年からはフランス極東学院の院長に就任し、1947年の退官までその職を務めました。第二次世界大戦中には、ヴィシー政権がユダヤ人の職業を制限する法律を制定しましたが、セデスは政権にとって有益な人物と見なされ、例外的にその影響を受けずに済みました。戦後、セデスはフランスに帰国し、エヌリー美術館のキュレーターとして、1969年に亡くなるまでその職にありました。また、フランス海外領国立学校、高等自然人類学学校、東洋言語学校などでも教鞭を執りました。
1934年には碑文・文芸アカデミーの通信会員に、1948年にはフランス海外領科学アカデミーの会員に、1958年には碑文・文芸アカデミーの正会員に選出されました。1964年にはアジア協会の会長に就任するなど、国内外で数々の栄誉に輝きました。
主な著書
セデスはフランス極東学院の機関誌「Bulletin de l'École Française d'Extrême-Orient（BEFEO）」に多数の論文を発表しました。特に1918年の論文では、碑文に記されたシュリーヴィジャヤが唐代の中国文献に現れる「室利仏逝」に相当することを指摘し、忘れられていたシュリーヴィジャヤ王国を再発見しました。
「Le royaume de Çrivijaya」 (BEFEO 18 (6), 1918)：シュリーヴィジャヤ王国の再発見に貢献した重要な論文。
「Articles sur le pays khmer」 (1989,1992)：1911年以降にBEFEOに発表したカンボジア研究論文をまとめたもの。
「Inscriptions du Cambodge」 (1937-1966)：全8巻からなるカンボジア碑文の収集、解読、翻訳に関する大著。
「Histoire ancienne des États hindouisés d'Extrême-Orient」 (1944)：東南アジアの16世紀までの歴史を整理した著作。後に「Les états hindouisés d'Indochine et d'Indonésie」として改訂版が出版。
日本語訳: 『東南アジア文化史』（山本智教訳、大蔵出版、1989年）
その他にも、以下のような重要な著作があります。
「Documents sur l'histoire politique et religieuse du Laos occidental」 (BEFEO 25 (1/2), 1925)：ラオス西部の政治と宗教に関する歴史的な文書。
「Pour mieux comprendre Angkor」 (1943)：アンコール遺跡を理解するための著作。
日本語訳: 『アンコール遺跡：壮大な構想の意味を探る』（三宅一郎訳、連合出版、1990年、改訂版1993年）
「Les peuples de la péninsule indochinoise - civilisations」 (1962)：インドシナ半島の文明に関する著作。
日本語訳: 『インドシナ文明史』（辛島昇・内田晶子・桜井由躬雄訳、みすず書房、1969年、新版1980年）
ジョルジュ・セデスの研究は、東南アジアの歴史と文化に対する理解を深める上で、不可欠な貢献を果たしました。彼の業績は、今もなお多くの研究者や学生に影響を与え続けています。
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