ジョン・ウィルモット (第2代ロチェスター伯)

ジョン・ウィルモット、第2代ロチェスター伯爵

1647年 4月1日に生を受け、1680年 7月26日に33歳でこの世を去ったジョン・ウィルモット、第2代ロチェスター伯爵は、王政復古時代のイングランドを代表する貴族であり、宮廷詩人でした。その短い生涯は、激しい放蕩と鋭い知性、そして予期せぬ回心によって彩られています。

父ヘンリー・ウィルモット初代伯爵は、清教徒革命で亡命中のチャールズ2世に騎兵隊長や寝室係侍従として仕えた人物です。ジョンは父の一人息子として生まれ、幼少期には母アンと共にパリに滞在。その後、領地のディッチリー・パークに戻ります。10歳頃からバーフォート文法学校で学び、古代ギリシャ・ラテンの古典に深く通じるようになりました。1660年にはオックスフォード大学ウォダム学寮に進み、翌年には14歳という若さで文学修士の学位を取得。学業を終えると、フランスとイタリアへの大規模な旅行に出発しました。

帰国後の1664年末、彼はエリザベス・マレットという大資産家の相続人に求婚を開始します。エリザベスはチャールズ2世の愛妾バーバラ・パーマーや大法官クラレンドン伯爵エドワード・ハイドとも遠縁にあたる人物でした。しかし、求婚は一筋縄ではいきませんでした。1665年5月、ロチェスターは一団を率いてエリザベスをチャリング・クロスで誘拐するという大胆な行動に出ますが、アックスブリッジで逮捕され、チャールズ2世の命によりロンドン塔へ送致されます。幸いにも6月には保釈金で釈放され、7月にはイングランド艦隊の義勇兵として出征。8月1日のベルゲン港でのオランダ共和国との戦闘に身を投じました。

海戦では驚くほどの勇敢さを示し、周囲からの賞賛を得ますが、同時に魂の不滅について深い疑念を抱くようになったと伝えられています。9月に帰国すると、10月には海戦での功績に対する褒賞として国王から750ポンドを賜りました。1666年3月には国王の寝室係侍従に任命され、6月には再び英仏海峡での海戦に参加。翌年1月29日にはエリザベス・マレットとの結婚を果たします。10月には上院に召喚されて議員となり、11月にはクラレンドン伯爵弾劾決議への支持を求める下院からの抗議文に署名しました。

その後の13年間は、ロンドンでの乱れた飲酒と放蕩、そして領地に戻って妻子と過ごす田舎での静穏な生活という、極端な二面性を繰り返す日々でした。ロンドンでは、女優のエリザベス・バリー、ボウテル夫人、国王の愛妾ロバーツ夫人といった女性たちと関係を持ち、特にバリーとの間には娘を一人もうけています（1677年）。また、いくつかのスキャンダルや事件にも巻き込まれました。1669年11月末にはマルグレイヴ伯爵との決闘寸前となりますが、ロチェスターの申し出により回避。1675年には泥酔の末、御苑にあった貴重な日時計を倒壊させるという騒ぎを起こします。1676年6月にはエプソムで治安官と争いを起こし、仲間のダウンズが夜警によって命を落とすという悲劇に見舞われました。この事件の後、彼は医者や占星術師に変装してタワーヒルで開業していたとも伝えられています。政治的には、1678年末にヨーク公ジェームズ（後のジェームズ2世）の王位継承を認めないとする下院の王位排除法案に対し、上院で反対の演説を行いました。また、1679年12月に詩人・批評家のジョン・ドライデンが襲撃され重傷を負った事件への関与も疑われています。

1669年から治療を開始していた梅毒は1677年頃から悪化の一途をたどります。病の進行と共に、彼は次第に公的な事柄への関心を深め、外国での官職に就くことも考え始めました。1679年10月、彼はバーネット博士（ギルバート・バーネット）の著書『宗教改革史』を読み耽り、キリスト教信仰に強く心を惹かれます。バーネット博士との間で、神の本質、理性、奇跡といった主題について対話が始まりました。

1680年の春、母の礼拝堂牧師が朗読する「イザヤ書」第53章を聞いたことで、ロチェスターは突然の深い回心を経験します。5月末から6月初めにかけて正式に悔悟し、秘蹟を受けました。6月19日には、自身の悪しき振る舞いが罪を犯す原因となったかもしれない全ての人々に対し、遺言とも言える「末期の忠告」を書き記し署名しました。そして、それからわずか1ヶ月後の7月26日、彼は33歳でその短い生涯を閉じました。

爵位は息子のチャールズが継承しましたが、チャールズも翌1681年に10歳で夭折したため、ウィルモット家のロチェスター伯爵位は途絶えました。その後、ヨーク公の義弟でありクラレンドン伯爵の次男であるローレンス・ハイドが、新たにロチェスター伯爵に叙されています。

詩人としての評価

ロチェスターは詩人としても重要な足跡を残しました。1675年にジョン・ドライデンと不仲となった後、彼はオトウェイ、ナサニエル・リー、サー・フランシス・フェインといった新進の劇作家たちを支援しました。自身は、宮廷社会を痛烈に風刺する機知に富んだ詩や、情熱的な恋愛詩を多く執筆しました。また、女優エリザベス・バリーの才能を見抜き、その開花に貢献したことでも知られています。しかし、彼の作品の中には露骨な表現や冒涜的な言葉遣いが見られたため、同時代の人々からも「ポルノ詩人」と評されるほど放縦なイメージがつきまといました。それでも後世になると、現代イギリスの詩人ピーター・ボーターが彼を「ボードレールやアルチュール・ランボーの先駆者」と呼ぶなど、その文学的価値は再評価される動きが見られます。短い生涯ながら、その作品は激動の時代背景と彼自身の波乱に満ちた人生を反映し、現代においても強烈な印象を与え続けています。

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