ジョン・ギャヴィン

ジョン・ギャヴィン

アメリカ合衆国の俳優であり、外交官としても活躍したジョン・ギャヴィン（John Gavin）は、1931年4月8日に生まれ、2018年2月9日にその生涯を閉じました。銀幕でのキャリアに加え、在メキシコ・アメリカ合衆国大使や映画俳優組合の代表を務めるなど、多岐にわたる分野で重要な役割を果たした人物です。

揺籃期と学究生活

ギャヴィンはロサンゼルスで誕生しました。父ヘラルド・ゴールナーはアイルランド系、母デリア・パブロスはメキシコ出身という多様なルーツを持ち、出生名はジョン・アンソニー・ゴールナーでした。後に父親が名字をギャヴィンに変更しています。

厳格なカトリック系の学校で学んだ後、スタンフォード大学に進学。大学ではラテンアメリカの経済史を専攻し、この時の学びが後の外交官としてのキャリアに繋がることになります。大学卒業後、1952年から1955年までの期間、アメリカ海軍で任務に就きました。

俳優としてのキャリア

海軍を退役したギャヴィンは、家族ぐるみの付き合いがあった映画監督ブライアン・フォイの作品に技術スタッフとして関わることを望みました。しかし、この希望は叶わず、代わりにフォイの勧めを受けてユニバーサル・ピクチャーズの俳優オーディションを受けることになります。193センチメートルの長身と端正な顔立ちが評価され、「第二のロック・ハドソン」として期待を寄せたユニバーサルと契約を結びました。

1956年の『Behind the High Wall』で俳優デビューを飾り、その後数々の作品に出演しました。特にアルフレッド・ヒッチコック監督の傑作『サイコ』（1960年）では主要な役を演じ、その存在感を示しました。同年には歴史スペクタクル大作『スパルタカス』や『悲しみは空の彼方に』といった話題作にも出演しています。1967年にはミュージカル映画『モダン・ミリー』で女優ジュリー・アンドリュースと共演するなど、幅広いジャンルで活躍しました。

また、『007 ダイヤモンドは永遠に』（1971年）では、一度は主人公ジェームズ・ボンド役への起用が決定し、ユナイテッド・アーティスツとの契約まで交わしていましたが、前作までボンドを演じたショーン・コネリーのシリーズ復帰が決まったことで、惜しくも降板することになりました。

主な出演作品には、『愛する時と死する時』（1958）、『スパルタカス』（1960）、『誰かが狙っている』（1960）、『モダン・ミリー』（1967）などがあります。

映画俳優組合でのリーダーシップ

俳優としての活動と並行して、ギャヴィンは映画俳優組合（Screen Actors Guild）の運営にも深く関わりました。1965年から役員を務め、副代表を経て、1971年には代表に就任しました。しかし、1973年の代表選挙では現職ながら新人候補であったデニス・ウィーバーに敗れ、退任を余儀なくされました。これは、映画俳優組合の代表選挙において、現職候補が新人候補に敗れる初めてのケースとして記録されています。

外交官としての功績

1981年、時の大統領ロナルド・レーガンによって、ギャヴィンは在メキシコ・アメリカ合衆国大使に任命されました。大使在任中は、地元のテレビカメラマンから暴行を受けるといった出来事もありましたが、幼少期から培った得意のスペイン語を駆使し、困難な状況にも対応しました。1986年6月までその職責を全うし、メキシコとの関係構築に貢献しました。

大使退任後、1991年には共和党から連邦上院議員選挙への出馬を打診されましたが、これを固辞し、政界でのキャリアを本格的に追求することはありませんでした。

ジョン・ギャヴィンは、ハリウッドのスターから一国の主要な外交官へと転身した稀有な人物として、アメリカ現代史にその名を刻んでいます。

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