ジョン・テンプルトン

サー・ジョン・マークス・テンプルトン：投資の巨匠と篤志家の生涯

サー・ジョン・マークス・テンプルトン(1912年11月29日-2008年7月8日)は、アメリカ合衆国生まれのイギリス人投資家で、20世紀において最も成功した投資家の一人として広く知られています。卓越した投資戦略と並外れた慈善活動で、世界に大きな足跡を残しました。

早期の人生と教育

テネシー州ウィンチェスターで生まれたテンプルトンは、名門イェール大学に入学。在学中は学内誌のビジネスマネージャーを務め、卒業後にはローズ奨学金を得てオックスフォード大学ベリオール・カレッジへ進学、法学修士号を取得しました。その後、CFA協会認定証券アナリストの資格を取得し、バリュー投資の第一人者であるベンジャミン・グレアムに師事しました。グレアムの教えは、テンプルトンの投資哲学の基礎を形成しました。

投資家としての成功

1930年代の世界恐慌時、テンプルトンは破産寸前の企業の株式を積極的に購入するという大胆な戦略をとりました。彼の慧眼は、第二次世界大戦後の経済復興によって見事に実を結び、莫大な利益をもたらしました。伝説によると、彼は終戦の日に仲介業者に1ドル以下の企業株の買い占めを指示したと言われています。

1954年、テンプルトンはミューチュアル・ファンド「テンプルトン成長株投信株式会社」を設立。このファンドは、長年にわたり平均年率15%という驚異的な成長を遂げ、テンプルトンを億万長者へと押し上げました。彼は、日本を含む世界各国への投資を行い、原子力、化学、電子産業など、成長が見込まれる分野に積極的に投資しました。1959年の株式公開時には、彼の資産は6,600万ドルを超えていました。2006年には、サンデー・タイムズ紙の長者番付にも名を連ねています。

テンプルトンの投資戦略は、テクニカル分析よりもファンダメンタル分析を重視するものでした。彼は、市場の混乱や不安定な状況を好機と捉え、「血が流れているときに買う」という格言を残しています。また、長期的な視点に立ち、株価の上昇局面での売却も躊躇しませんでした。特に、アメリカではまだ注目されていなかったアジアや東欧市場への投資は、彼の先見性を示すものです。2005年には、サブプライム住宅ローン危機を予見した報告書を発表していることでも知られています。

投資哲学と生活スタイル

テンプルトンの成功は、彼の自制心にも支えられていました。彼は贅沢を避け、質素な生活を送っていました。運転手やファーストクラスの利用を避け、その姿勢から友人にカルヴァン主義者と評されたほどです。彼は、お金を得ること自体よりも、社会への貢献を重視していたのです。

私生活と信仰

テンプルトンは、生涯を通じて長老派のクリスチャンとして信仰を貫き、ニュージャージー州イングルウッドの教会の長老を務めました。また、プリンストン神学校評議委員としても長年貢献しました。1937年に結婚した妻ジュディスとは3人の子供をもうけましたが、1951年にジュディスを亡くし、その後再婚しています。2008年7月8日、95歳で肺炎のためバハマで亡くなりました。

篤志家としての貢献

テンプルトンは、生涯で10億ドル以上を慈善活動に寄付した、歴史上最も偉大な篤志家の一人です。1964年にアメリカ市民権を取得した際には、巨額の寄付金による税額控除を受けています。イギリス市民権も保有し、バハマを生活拠点としていました。

彼の慈善活動は多岐に渡り、1972年に創設したテンプルトン賞は科学と宗教の接点を模索する研究者を支援する賞として知られています。さらに、テンプルトン図書館の建設、オックスフォード大学テンプルトン・カレッジ（現在はグリーン・テンプルトン・カレッジ）の設立など、教育や研究分野への貢献も著しいものです。

これらの功績が認められ、1987年にはイギリス王室からナイトの称号を授与されました。2007年には、タイム誌の「世界で最も影響力のある100人」にも選ばれています。彼の功績は、投資家としての成功にとどまらず、人類社会への貢献としても高く評価されています。

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