ジョン・モウブレー (第4代ノーフォーク公)

第4代ノーフォーク公ジョン・モウブレー：薔薇戦争と相続の狭間で生きた貴族

第4代ノーフォーク公ジョン・モウブレー(1444年10月18日-1476年1月14日)は、15世紀イングランドを揺るがした薔薇戦争の渦中で活躍した、影響力のある貴族でした。彼の生涯は、権力闘争、相続争い、そしてイングランド貴族社会の複雑な様相を鮮やかに映し出しています。

ヨーク朝への忠誠と軍事的功績

ジョン・モウブレーは、第3代ノーフォーク公ジョン・モウブレーとエレノア・バウチャーの子として生まれました。1451年にはサリー伯に叙爵され、1461年には父の死によりノーフォーク公位と莫大な所領を継承しました。薔薇戦争においてはヨーク朝エドワード4世に忠誠を誓い、ランカスター朝勢力との戦いに身を投じます。1462年にはスコットランドから侵攻してきたマーガレット・オブ・アンジュー率いるランカスター派をノーサンバーランドで迎え撃ち、アニック城を奪取するなど、軍事的な成功を収めました。

王室との複雑な関係と領地紛争

しかし、エドワード4世との関係は常に円滑だったわけではありません。エドワード4世はモウブレーの広大な所領を狙っており、1465年にはモウブレーの祖母キャサリンを、王妃エリザベス・ウッドヴィルの弟ジョンと政略結婚させるなど、影響力を及ぼそうとしました。さらに、エドワード4世が弟のクラレンス公ジョージ・プランタジネットやウォリック伯リチャード・ネヴィルと対立した際には、モウブレーはエドワード4世支持を表明したため、ウォリック伯に捕らえられる事態も発生しました。その後、エドワード4世がウォリック伯を討ち取った後、モウブレーは解放されます。

一方、モウブレーはノーフォークにおけるジョン・ファストルフの遺産相続問題にも深く関わっていました。相続人たちの争いに介入し、特にパストン家に対して圧力をかけました。その結果、1469年8月にはカイスター城を攻撃、9月にはこれを奪取しました。その後、ウィンチェスター司教の仲介で一時的にカイスター城をパストン家に返還しますが、1471年6月には再び奪取し、死まで手放すことはありませんでした。妻やエドワード4世の仲介も無視した彼の強硬な姿勢は、彼の権力と独立性を示すものです。

後継ぎの不在と爵位の消滅

モウブレーはエリザベス・タルボットと結婚しましたが、息子に恵まれませんでした。1476年に彼が死去すると、ノーフォーク公爵位は消滅し、広大な所領と財産は3歳の一人娘アン・モウブレーが相続しました。1478年にはアンはエドワード4世の次男リチャードと結婚しました。カイスター城も王室の承認の下、パストン家に返還されています。

結論

ジョン・モウブレーの生涯は、薔薇戦争という激動の時代を生き抜いた一貴族のドラマとして、また、権力、忠誠、相続、そして土地所有をめぐる複雑な人間関係を浮き彫りにする歴史的事件として捉えることができます。彼の行動は、当時のイングランド貴族社会の政治的、経済的、そして社会的な構造を理解する上で貴重な手がかりを与えてくれます。彼の死によって消滅したノーフォーク公爵位と、その後の相続問題の経緯は、中世イングランドにおける爵位継承と土地所有の仕組みを考察する上で重要なケーススタディとなっています。彼の遺産は、現代の私たちに、歴史の深淵と複雑さを改めて考えさせるものです。

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