ジョン・ラター

ジョン・ミルフォード・ラター（John Milford Rutter CBE, 1945年9月24日 - ）は、イギリスの作曲家、編曲家、指揮者です。特に合唱音楽の分野で傑出した才能を発揮し、国際的に高い評価を得ています。日本語ではラッターと表記されることもあります。彼の作品の多くは、オックスフォード大学出版局から出版されており、世界中の合唱団によって演奏されています。

生い立ちと音楽教育

ロンドンで生まれたラターは、幼少期から音楽に親しみ、ハイゲート校に入学。聖歌隊員として、ブリテンの『戦争レクイエム』の初期録音に参加するなど、音楽的な才能を早くから開花させました。ハイゲート校では、ジョン・タヴナーやハワード・シェリーといった著名な音楽家と同級生でした。その後、ケンブリッジ大学のクレア・カレッジで音楽を学び、在学中からクリスマス・キャロルの編曲やオリジナル作品の作曲に取り組むなど、その才能を遺憾なく発揮しました。1975年からは母校クレア・カレッジの音楽科主任として合唱団の指導にもあたり、後進の育成にも尽力しました。

作曲家としてのキャリア

1979年に、作曲活動に専念するためにカレッジを辞任。1981年には、教え子たちを中心にプロの合唱団「ケンブリッジ・シンガーズ」を結成しました。1984年には、自身の作品を録音・販売するレーベル「コレギウム・レコード」を設立し、自作を含む数多くの合唱曲をリリースしました。

1980年には、プリンストンのウェストミンスター合唱大学の名誉フェローに就任。1985年から1992年にかけて慢性疲労症候群に苦しんだため、作曲の委嘱を一時的に中断せざるを得なくなりました。しかし、1988年には教会音楽家連盟のフェローに就任。1996年には、教会音楽への貢献が認められ、カンタベリー大主教からランベス音楽博士号を授与されました。

作風と影響

ラターの作風は、合唱音楽を中心に据え、キャロル、アンセム、ミサ曲など多岐にわたります。中でも、典礼文に付曲した『グローリア』や『レクイエム』は、彼の代表作として知られています。これらの作品は、美しい旋律と豊かなハーモニー、そして洗練された音楽性が特徴で、世界中の合唱団によって愛唱されています。

日本においては、1980年代後半から作品が歌われ始め、1990年代にはケンブリッジ・シンガーズのCDが多数輸入されるようになり、広く演奏されるようになりました。また、フォーレの『レクイエム』の校訂者としても知られ、1893年版を出版しました。この版は、オーケストラの編成が小規模で、作曲者の意向をより反映したものとして評価されています。ラターによる校訂は、その後のフォーレの『レクイエム』の演奏に大きな影響を与えました。

主な作品

宗教合唱曲

合唱と管弦楽
Gloria（1974）
Requiem（1985）
Magnificat（1990）
Psalmfest（1993）
アンセム
The Lord bless you and keep you
O be joyful in the Lord
Te Deum
クリスマス・キャロル（オリジナル）
Shepherd's Pipe Carol
Star Carol
Candlelight Carol
クリスマス・キャロル（編曲）
Eight Christmas Carols
Twelve Christmas Carols
Dancing Day（1974）
その他の宗教曲
All things bright and beautiful
For the beauty of the earth
The Lord bless you and keep you

世俗合唱曲

Five Childhood Lyrics（1973）
Three American Lyrics
The Sprig of Thyme
Birthday Madrigals（1995）
ゲール人の祝福

器楽曲

Suite for Strings（1973）
Suite Antique（1979）

外部リンク

Collegium Records
Oxford University Press

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