ジョヴァンニ・アントニオ・スコポリ

ジョバンニ・アントニオ・スコポリ：多才な博物学者の生涯

ジョバンニ・アントニオ・スコポリ（Giovanni Antonio Scopoli, 1723年6月3日 - 1788年5月3日）は、18世紀のイタリアを代表する医師、博物学者です。彼は、その業績から「オーストリア帝国のリンネ」とも称されています。

生い立ちと初期の活動

スコポリは、現在のイタリア北部、チロル地方のヴァル・ディ・フィエンメで生まれました。父親は法律家であり、彼はインスブルック大学で医学を学びました。医師としてカヴァレーゼやヴェネツィアで開業する傍ら、アルプス山脈で植物や昆虫を採集し、独自のコレクションを築き上げました。

水銀鉱山での活動

スコポリは、2年間、オーストリアの司教の私設秘書を務めた後、1754年にハプスブルク君主国のイドリヤ水銀鉱山の医師に任命され、1769年までその職にありました。この地で、彼は水銀中毒に関する研究を行い、1761年にその成果をまとめた著書『De Hydroargyro Idriensi Tentamina』を発表しました。

自然史研究への貢献

スコポリは、カルニオーラ（現在のスロベニアの一部）の動植物に関する研究にも力を注ぎ、『Flora Carniolica』（1760年）や『Entomologia Carniolica』（1763年）などの著作を出版しました。これらの著作は、地域の自然史研究に大きく貢献しました。また、各地の鳥類に関する記述をまとめた『Anni Historico-Naturales』（1769-1772年）も出版しています。

大学教授として

1769年、スコポリはバンスカー・シュチャヴニツァの鉱山学校の化学と金属学の教授に任命され、教育者としてのキャリアをスタートさせました。その後、1777年にはパヴィア大学に移り、教鞭をとりました。しかし、パヴィア大学では、ラザロ・スパランツァーニとの間で標本を巡る争いが起こり、裁判にまで発展しました。裁判の結果、スパランツァーニは無罪となりましたが、この事件はスコポリの心に大きな傷跡を残し、彼は心臓病を患い、1788年に亡くなりました。彼の最後の著作は、北イタリアの動植物に関する『Deliciae Flora et Fauna Insubricae』（1786–88）となりました。

スコポラミンとハシリドコロ属

植物学の分野では、ナス科の植物であるハシリドコロ属（Scopolia）に彼の名が献名されています。ハシリドコロ属からは、アルカロイドの一種であるスコポラミンが初めて発見されました。

主な著書

スコポリは、生涯にわたり数多くの著作を発表しました。以下に代表的なものを挙げます。

De affectibus animi dissertatio physico-medica (1753)
Flora Carniolica (1760, 1772)
Entomologica carniolica (1763)
Annus I-V historico-naturalis (1768-72)
Einleitung zur Kenntniß und Gebrauch der Foßilien (1769)
Bemerkungen aus der Naturgeschichte (1770)
De Hydrargyro Idriensi tentamina physico-chymico-medica (1771)
Dissertationes ad scientiam naturalem pertinentes (1772)
Fundamenta chemicae praelectionibus publicis accomodata (1777)
Introductio ad historiam naturalem (1777)
* Deliciae Flora et Fauna Insubricae (1786-88)


スコポリの学術的な貢献は多岐にわたり、医学、博物学、鉱物学など、様々な分野に影響を与えました。彼の研究は、18世紀の科学の発展に大きく貢献したと言えるでしょう。

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