スコポラミン

スコポラミンについて

スコポラミン（英: scopolamine）は、トロパンアルカロイドに分類される物質で、ムスカリン受容体拮抗薬として知られています。この物質はヒヨスチン（hyoscine）とも呼ばれており、アセチルコリンがムスカリン受容体に結合するのを競合的に阻害することによって抗コリン作用を発揮します。この作用により、副交感神経系が抑制され、様々な生理的変化が生じます。これには瞳孔の散瞳（瞳孔の拡大）、眼圧の上昇、レンズの調節機能の麻痺、心拍数の増加、消化管の緊張及びその運動の抑制などが含まれます。

医療での利用

日本で承認されているスコポラミン誘導体の一つに、ブチルスコポラミン臭化物（製品名：ブスコパン）があります。これは1940年代後半にドイツのベーリンガーインゲルハイムによって開発された鎮痙剤で、消化管の運動を抑制します。そのため、消化管のX線検査や内視鏡検査の前処置、消化管の疼痛緩和などに広く使用されています。また、尿路結石に伴う痛みを軽減するために尿管を拡張させるためにも用いられます。

ただし、ブチルスコポラミンの使用には注意が必要です。主な副作用には口渇（9.4%）、便秘（4.4%）、調節障害（1.7%）、心悸亢進（1.4%）があります。過剰投与によってはせん妄や血圧の上昇を引き起こす可能性があり、そのため有効成分は毒薬に分類されています。

禁忌および慎重投与

スコポラミンは特定の状況での使用が禁忌とされています。例えば、緑内障の患者には眼内圧を上昇させるため絶対に使用すべきではありません。また、前立腺肥大による尿閉を悪化させる可能性があるため、高齢の男性への投与は慎重に行う必要があります。さらに、出血性大腸炎などの疾患に対しても禁忌となっています。

精神的影響

スコポラミンは、ヒトにおいて記憶機能に影響を及ぼすことが確認されています。言語エピソード[[記憶]]や意味記憶における障害、注意力検査におけるパフォーマンス低下などが報告されています。これにより、スコポラミンはデートレイプドラッグとしても知られています。ブチルスコポラミンの体内への吸収率は1%未満であり、通常の治療用量では精神面への影響はほとんど見られないとしていますが、頭痛や眠気は数パーセントの人に見られる場合があります。

一方、スコポラミンはうつ病や双極性障害に対する抗うつ薬として注目されており、初回投与から3日後には効果が現れることが示されています。スコポラミンがどのように神経伝達物質に作用して、抑うつ症状を緩和するかのメカニズムに関する研究が進められています。

参考文献

• - 伊藤勝昭ほか編集 『新獣医薬理学 第二版』 近代出版 2004年 ISBN 4874021018

関連項目

• - アトロピン
• - チョウセンアサガオ

スコポラミンはその多様な生理作用から、医療の現場のみならず、研究分野においても重要な物質であり続けています。

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