ジョヴァンニ・アントニオ・ペトラッツィオ・ダ・リエーティの娘の潰瘍を治療する聖ベルナルディーノ

ピエトロ・ペルジーノが1473年に制作したテンペラ画『ジョヴァンニ・アントニオ・ペトラッツィオ・ダ・リエーティの娘の潰瘍を治療する聖ベルナルディーノ』は、聖ベルナルディーノの奇跡を描いた連作板絵の1つです。この作品は、単に『若い娘の治療』や『娘を治療する聖ベルナルディーノ』とも呼ばれます。

制作背景

この絵画は、ペルージャが聖ベルナルディーノ信仰の中心地であったことに深く関連しています。サン・フランチェスコ・アル・プラート教会に隣接するサン・ベルナルディーノ礼拝堂には、聖人の奇跡を描いた8枚の連作板絵が設置されていました。この連作は、1472年に聖ベルナルディーノの聖遺物がラクイラのサン・ベルナルディーノ大聖堂に移されたことをきっかけに発注されたと考えられています。本作品には1473年の日付が記されており、連作の図像は1474年に出版された『小さき修道会の鑑』に由来します。発注者は、聖ベルナルディーノの信仰を広めるため、フランシスコ会の修道士であったと推測されます。

美術史家マリア・ロザリア・ヴァラッツィは、この作品にフェラーラのエステ家をほのめかす要素が見られることから、フェラーラ公爵エルコレ1世・デステの意図で制作された可能性を示唆しています。

作品の特徴

連作は、聖ベルナルディーノが生前および死後に行ったとされる奇跡を描いています。連作は建築学的構図が特徴ですが、各作品には制作方法の違いが見られ、制作者をめぐって議論がなされています。

本作品では、聖ベルナルディーノがジョヴァンニ・アントニオ・ペトラッツィオ・ダ・リエーティの娘の潰瘍を治療する様子が描かれています。画面下中央に座る赤い服の少女は、手を合わせて感謝を表し、その背後では親族が少女の回復に驚いています。背景には、ルネサンス期の宮廷を思わせる華やかな建築要素が描かれ、奥には古代ローマのティトス帝の凱旋門が見えます。1473年の日付はここに記されています。中央のアーチは奥行きのある美しい風景へと続いています。

他の連作と比較すると、本作品では下書きに使われる線刻が、金色で描かれた建築要素の部分にだけ見られる点が異なります。この作品は、ペルジーノの古典的な様式を先取りしており、後の色彩感覚を予感させます。画面左の人物の複雑な衣装は、フィレンツェ絵画の影響を示しており、一方、右に立つ若い人物の身振りは、ペルジーノの優雅で洗練された趣向を示唆します。美しい風景は、ペルジーノの特徴的な背景描写の初期例であり、15世紀後半のフランドルの風景画の影響を受けています。

来歴

1537年、礼拝堂が再奉献された際に連作は解体されました。その後、板絵はサン・フランチェスコ・アル・プラート教会が所有していましたが、ナポレオン時代にペルージャから運び去られました。1812年、ルーヴル美術館の館長ドミニク・ヴィヴァン・ドゥノンは、本作品と『死後に現れて盲目のリッカルド・ミクツィオ・ダラクイラを回復する聖ベルナルディーノ』をパリに運びました。ナポレオン失脚後、アントニオ・カノーヴァの尽力により1815年に回収され、1816年には他の6作品とともにカピトリーノ美術館に移されました。1863年にはウンブリア国立美術館に移され、1991年から1993年にかけて修復されました。

ギャラリー

画像1
画像2
画像3
画像4
画像5
画像6
画像7

脚注

[1] 『西洋絵画作品名辞典』黒江光彦監修、三省堂（1994年）
[2] 『イタリア・ルネサンス都市と宮廷の文化展』アントーニオ・バオルッチ、高梨光正、日本経済新聞社（2001年）

外部リンク

ウンブリア国立美術館公式サイト

もう一度検索