ジョージ・テンプルトン・ストロング

ジョージ・テンプルトン・ストロング・ジュニア（George Templeton Strong Jr.）は、1856年にアメリカ合衆国ニューヨークで生まれ、1948年にスイスのジュネーヴで生涯を終えた作曲家であり、同時に優れた水彩画家でもありました。そのキャリアは、故郷を離れてヨーロッパ、特にスイスで長く活動した国際的なものでした。

生涯

同名の父ジョージ・テンプルトン・ストロングは、鉄道会社の顧問弁護士を務め、エイブラハム・リンカーンの元同僚でもあり、ニューヨーク・フィルハーモニック協会の理事も兼任するなど、ニューヨーク州において名士として知られた人物でした。恵まれた家庭環境の中、ストロングは両親の勧めにより、教養としてピアノやヴィオラ、オーボコロンなどを学び始めます。特にニューヨーク・フィルハーモニー協会のリハーサルに足しげく通ううちに、音楽への情熱を強く募らせていきました。しかし、音楽家を志したいという彼の夢を父に語ったところ、猛烈な反対に遭い、ついには家を出て自立することを余儀なくされます。

生活のために、ストロングはまずメトロポリタン歌劇場管弦楽団でイングリッシュホルン奏者として働き始めます。そして1879年、彼はヨーロッパへ渡ります。異国の地では、オーケストラのヴィオラ奏者として生計を立てながら、本格的に作曲の道を追究しました。ライプツィヒ音楽院ではザーロモン・ヤーダスゾーンに師事し、その後フランクフルトでヨアヒム・ラフの下で学びます。これらの学びを経て、ヴィースバーデンを拠点に作曲活動を開始し、新ドイツ楽派に近い立場でそのキャリアを築いていきました。1885年に発表した交響詩『ウンディーネ』はフランツ・リストに献呈され、高い称賛を得ています。また、大作である交響曲第2番『ジントラム』は1888年に完成されました。

1891年、故郷の作曲家エドワード・マクダウェルの招きに応じて一時アメリカに帰国し、ボストンのニューイングランド音楽院で作曲科の教授として教鞭を執ります。しかし、体調を崩したこともあり、わずか2年で満足な成果を得られずに辞職し、再びヨーロッパへと戻りました。その後、スイスに居を構えることになります。1890年代には、音楽活動よりも地方の風景画家として生計を立てる時期もありました。

1900年代に入ると、徐々に作曲活動を再開させ、1910年代には指揮者のエルネスト・アンセルメなど、当時の著名な音楽家たちとも親交を深めます。これにより、ジュネーヴの音楽界において重要な人物の一人として認められるようになりました。これ以降、彼は画業と並行しながら、旧作の改訂や、主に管弦楽曲を中心とする作曲活動を晩年まで精力的に続けました。

作風と作品

ストロングの音楽性は、彼がドイツの多様な音楽都市、例えばアカデミックなライプツィヒ、よりロマンティックなフランクフルト、そして進歩的な新ドイツ学派の中心地であったヴァイマルなどで研鑽を積んだ経験に深く根ざしています。これにより、彼は柔軟で幅広い音楽的趣味を身につけました。音楽づくりにおいては、形式的な明晰さや職人的な完成度を重視する一方で、独自の着想や創造性も非常に尊重する姿勢が見られます。

同時代の他の作曲家に対する彼の評価も、この姿勢を反映しています。アレクサンドル・グラズノフやモーリス・ラヴェルに敬意を表し、グスタフ・マーラーやリヒャルト・シュトラウスの作品には情熱的な支持を示しました。一方、友人であったエルネスト・アンセルメが擁護したイーゴリ・ストラヴィンスキーの作品に対しては、完全な理解には至らなかったようです。

作品の編成という点では、ピアノ曲や歌曲を中心に創作したマクダウェルとは対照的に、ストロングはアンサンブル作品、特に管弦楽作品を得意としました。また、アメリカ帰国後にアメリカの様々な民族音楽に影響を受けたマクダウェルとは異なり、短い帰国期間であったストロングは、民族主義的な作風にはほとんど関心を示しませんでした。スティーヴン・フォスターの作品を編曲したり、一時的にマクダウェルの手法を取り入れて北米大陸先住民の民謡を改作した程度に留まっています。

作曲家としてのストロングは、概ねロマン主義音楽の伝統の中に位置づけられます。ジョアキーノ・ロッシーニ、エクトル・ベルリオーズ、そして師であるヨアヒム・ラフからの影響を受け、オーケストレーションはしばしば重厚で華麗な響きを持っています。しかし、どこか悲観的な主題を選んだり、劇的で不安定な表現を好む傾向は、精神的な面でピョートル・イリイチ・チャイコフスキーとの共通性を感じさせます。特に長大な交響詩『アーサー王』（1916年）の音色や表現の質は、しばしばチャイコフスキーの『悲愴交響曲』を思い起こさせることが少なくありません。同時代のマクダウェルやジョージ・チャドウィックと比較して旋律の呼吸が長い点も、チャイコフスキーを想起させる要素です。一方で、ストロングの交響詩は長大なものが多いにもかかわらず、楽曲構成は緊密で、展開は論理的であるという特徴も持ち合わせています。

主要作品

交響曲第2番ト短調作品50（1887年 - 1888年）
交響詩『ウンディーネ』（1885年、1939年の改訂稿はフランス語で『オンディーヌ』）
交響組曲『夜』（1913年）
交響詩『アーサー王』（1916年）
3つの管弦楽組曲『スケッチ帳から（D'un Cahier d'Images）』
1890年代の2台ピアノ用草稿に基づき、1940年頃にオーケストレーションされたもの。
* 弦楽合奏のための『レーオ・ハスラーのコラール主題による変奏曲』（1929年）

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