ジョーン・オブ・ケント

ジョーン・オブ・ケント：美貌と波乱に満ちた生涯

ジョーン・オブ・ケント（1328年 - 1385年）は、その美貌から「ケントの美女」と称えられ、イングランド王室に深く関わった女性です。エドワード黒太子の妃として、またリチャード2世の母として、彼女は歴史の舞台で重要な役割を果たしました。

生涯

ジョーンは、エドワード2世の異母弟である初代ケント伯エドマンド・オブ・ウッドストックの娘として生まれました。彼女の生涯は、3度の結婚によって特徴づけられます。

最初の結婚は1340年、トマス・ホランドと秘密裏に行われました。しかし、この結婚は家族によって覆され、ジョーンは第2代ソールズベリー伯ウィリアム・モンタキュートと結婚させられます。その後、1349年にローマ教皇クレメンス6世の裁定により、ソールズベリー伯との結婚は無効とされ、トマス・ホランドとの最初の結婚が有効と認められました。1352年には、弟の第3代ケント伯ジョンの死により、夫トマス・ホランドと共にケント伯を継承しました。

トマス・ホランドとの間には、4人の子供が生まれています。

トマス・ホランド（第2代ケント伯）
ジョン・ホランド（初代エクセター公）
ジョーン・ホランド（ブルターニュ公ジャン4世妃）
モード・ホランド（サン＝ポル伯兼リニー伯ワレラン3世妃）

1360年にトマス・ホランドが亡くなった後、ジョーンは1361年にエドワード黒太子と再婚します。この結婚により、ジョーンはプリンセス・オブ・ウェールズとなりました。エドワード黒太子との間には、2人の息子が生まれています。

エドワード・オブ・アングレーム
リチャード2世（イングランド王）

1376年にエドワード黒太子が亡くなると、翌1377年にリチャード2世が即位しました。ジョーンは幼いリチャード2世を育て、彼の人格形成に大きな影響を与えたと言われています。彼女は1385年に56歳で亡くなるまで、リチャード2世を支え続けました。

トマス・ホランドとの間に生まれた息子たちは、リチャード2世に重用されました。しかし、1399年にリチャード2世が廃位され、ヘンリー4世が即位すると、彼らは冷遇され、最終的には処刑されるという悲劇に見舞われました。

ガーター勲章にまつわる伝説

ジョーンには、ガーター勲章の起源にまつわる有名な伝説があります。1347年のカレー包囲戦後の舞踏会で、ジョーンがガーターを落とした際、エドワード3世がそれを拾い上げ、自らの足にはめてジョーンを庇ったという逸話です。このエピソードがガーター勲章誕生のきっかけになったとされていますが、史実として認められているわけではありません。しかし、騎士道精神を示す物語として、広く語り継がれています。

ジョーン・オブ・ケントは、その美貌と波乱に満ちた生涯を通して、イングランド史に名を刻んだ女性です。彼女の人生は、愛、権力、そして王室の運命が複雑に絡み合った、魅力的な物語として今も語り継がれています。

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