ジョー・ジラルディ

ジョセフ・エリオット・ジラルディ（Joseph Elliot Girardi）は、1964年 10月14日、アメリカ合衆国イリノイ州ピオリアで生まれました。彼は元プロ野球選手（捕手）であり、後に監督としても活躍しました。右投右打で、1989年から2003年までの15年間、シカゴ・カブス、コロラド・ロッキーズ、ニューヨーク・ヤンキース、セントルイス・カージナルスでプレーしました。その後、2006年にはフロリダ・マーリンズ、2008年からはニューヨーク・ヤンキースの監督を務め、マーリンズ監督時代にはナショナルリーグ最優秀監督賞を受賞しています。

プロ入り前

イリノイ州イーストピオリアで育ったジラルディは、高校時代には野球部で捕手として、またアメリカンフットボール部ではクォーターバックとして活躍しました。ノースウェスタン大学に進学後も野球を続けながら、生産工学を専攻しました。勉学とスポーツの両立を果たした努力家でした。

現役時代

1986年のMLBドラフトでシカゴ・カブスから5巡目（全体116位）で指名され、プロ入りを果たしました。1988年にはベネズエラのウィンターリーグに派遣され、経験を積みました。1989年、カブスでメジャーデビューし、捕手としてのキャリアをスタートさせました。

1992年のオフには、エクスパンション・ドラフトで新球団コロラド・ロッキーズに移籍。ロッキーズの初年度開幕戦には「7番・捕手」として先発出場しました。

1996年、ニューヨーク・ヤンキースへトレード移籍。この年から1999年までの4年間、ヤンキースの正捕手として活躍し、チームを3度のワールドシリーズ制覇に導きました。特に1996年のワールドシリーズ第6戦では、グレッグ・マダックスから決勝点となるタイムリー三塁打を放ち、シリーズ制覇に大きく貢献しました。また、伊良部秀輝、アンディ・ペティット、デビッド・ウェルズ、デビッド・コーン、マリアノ・リベラといった名投手たちとバッテリーを組み、1999年7月18日にはコーンが達成した完全試合の捕手も務めました。さらに、1996年にはドワイト・グッデンが達成したノーヒットノーランの際にも捕手を務めています。ヤンキースが若手のホルヘ・ポサダをメジャーに昇格させた際には、ジラルディが彼のメンターとなり、良きライバルとして出場機会を競い合いました。

2000年には、古巣カブスに再移籍し、オールスターにも初選出（出場はせず）されました。2003年はセントルイス・カージナルスでプレーし、現役生活を終えました。

引退後～マーリンズ監督

2004年、ヤンキースのスプリングトレーニングに招待選手として参加しましたが、メジャー昇格は叶わず引退を決意。その後、ヤンキース傘下のケーブルテレビ局YESで解説者として活動しました。

2005年にはフロリダ・マーリンズからベンチコーチのオファーがありましたが、「将来的には監督就任を前提」という条件を蹴り、ジョー・トーリ監督の下でヤンキースのベンチコーチを1年間務めました。

2006年、ジャック・マキーオンの後任としてマーリンズの監督に就任。監督としての最初の行動は、選手への「髭禁止令」でした。主力選手を放出した後の若手主体のチームで指揮を執り、78勝84敗と4位に終わりましたが、一時的にワイルドカード争いを繰り広げる健闘を見せました。この年のマーリンズの総年俸はわずか1400万ドル程度でした。

しかし、ジラルディとマーリンズのオーナー、ジェフリー・ローリアとの関係は良好ではなく、試合中にローリアが審判に暴言を吐き続けた際に、ジラルディとベンチコーチが窘めたことがきっかけで大喧嘩となりました。結果、10月3日にジラルディは解雇されました。しかし、彼の采配は評価され、同年のオフにはナショナルリーグの最優秀監督賞を受賞しました。解雇後、多くの球団が彼に興味を示しましたが、最終的にヤンキースはトーリ監督が残留したため、カブスもルー・ピネラが就任したため、実現には至りませんでした。2007年には再びYESで解説者を務め、ボルチモア・オリオールズからの監督オファーも固辞しました。

ヤンキース監督時代

2007年10月30日、古巣ヤンキースの監督に就任することが発表されました。総額750万ドルの3年契約を結びました。現役時代に付けていた背番号25はジェイソン・ジアンビが使用していたため、代わりに27を選びました。これは、チームを27回目のワールドシリーズ制覇に導きたいという思いが込められていました。就任1年目の2008年はプレーオフ進出を逃しましたが、2009年にはチームを地区優勝、リーグ優勝、そして9年ぶり27回目のワールドチャンピオンに導きました。優勝後のインタビューで、背番号について「来年は28に変えようかな」とコメントし、2010年からは背番号を28に変更しました。

2013年、2014年はチーム総失点が総得点を上回り苦戦を強いられましたが、シーズン勝ち越しは果たしました。2017年10月26日、契約満了となるシーズン限りで10シーズン務めたヤンキース監督を退任しました。

フィリーズ監督時代

2019年10月24日、フィラデルフィア・フィリーズの監督に就任。3年契約で、2023年シーズンの選択権は球団側が持っていました。2020年はCOVID-19の影響で60試合制となり、ナショナルリーグでもDH制が導入されました。チームは地区3位に終わりましたが、8月26日のナショナルズ戦で監督通算1000勝を記録しました。2021年には、マックス・シャーザーとの不正投球騒動で退場処分を受ける一幕もありました。2022年6月3日にフィリーズの監督を解任されました。その後、チームはベンチコーチだったロブ・トムソン監督代行のもとでワールドシリーズ進出を果たしました。

選手起用

ジラルディは打順において、2番打者に中長距離打者を置く傾向があります。マーリンズ時代には新人のダン・アグラを2番に起用し、ヤンキース時代にはデレク・ジーターを1番に据え、2番には長打力のある選手を起用しました。例えば、カーティス・グランダーソンを2番に起用した際には、その年41本塁打、119打点の活躍を見せています。また、イチローの起用については、入団当初は8番に据え、後に調子が上がると2番に起用するなど、選手の調子を考慮した采配をしました。

投手起用に関しては、先発投手を100球を目安に交代させ、左打者に対しては左のリリーフを投入するなど、基本に忠実な起用法をしました。

日本人選手との関係

ジラルディはヤンキース監督時代に多くの日本人選手と接点を持ちました。特に、松井秀喜とイチローの指揮官として知られ、彼らに対するコメントを求められることも多くありました。

松井秀喜
ジラルディ監督時代に1～2年在籍。松井の打撃を高く評価していましたが、守備力は戦力として考えていませんでした。2009年には松井を守備に就かせず、ワールドシリーズMVPとなった松井の活躍もあり、チームはワールドチャンピオンに輝きました。松井の国民栄誉賞受賞については、「素晴らしい選手であり、素晴らしい人間」と称えました。

黒田博樹
ジラルディ監督時代に5～7年在籍。ローテーションの軸として活躍し、ジラルディは黒田を「最高のヤンキーであり、最高のお手本」と称賛しました。黒田は移籍当初に「Just be yourself」と言われたことが立ち直るきっかけになったと語っています。

イチロー
ジラルディ監督時代に5年目途中から7年在籍。衰えを指摘されることもありましたが、調子が上がると2番として起用するなど、選手の調子を考慮した起用をしました。

田中将大
ジラルディ監督時代7年目に加入。5月に月間最優秀投手を受賞するなど活躍しましたが、肘の故障で離脱。ジラルディは田中の肘の状態を心配し、今後の投球に期待を寄せました。

私生活

ジラルディはキンバリー夫人との間に3人の子供をもうけ、ニューヨーク・パーチェイスに在住しています。イタリア系の血筋で、キリスト教を信仰しています。健康主義者としても知られており、クラブハウスから甘いものを撤去したことでも知られています。2009年のワールドシリーズ制覇後には、帰宅途中に交通事故を目撃し、負傷者の救助を行うなど、勇敢な一面も持っています。

詳細情報

年度別打撃成績
年度別守備成績
各年度の太字はリーグ最高
年度別監督成績

WS…ワールドシリーズ、LCS…リーグチャンピオンシップシリーズ、DS…ディビジョンシリーズ。

表彰

ナ・リーグ最優秀監督賞：1回（2006年）

記録

MLBオールスターゲーム選出：1回（2000年）

背番号

7（1989年 - 1995年）
45（1996年 - 同年途中）
25（1996年途中 - 1999年、2020年 - 2022年）
8（2000年、2003年）
27（2001年 - 2002年、2008年 - 2009年）
28（2010年 - 2017年）