ジルコニア

ジルコニア（ZrO2）について

ジルコニアとは、化学式ZrO2で表される二酸化ジルコニウムのことを指します。常温では白色の固体であり、その高い融点は常圧下で2700℃に達し、このため耐熱性に優れた素材として広く利用されています。ジルコニアは宝飾品にも利用され、その美しい透明度と高い屈折率から「模造ダイヤモンド」と呼ばれることもあります。

結晶構造と相転移

ジルコニアは室温では単斜晶系で構造を保っていますが、温度が1170℃に達すると正方晶構造に、さらに2370℃では立方晶構造に変わります。これらの相転移には体積の変化が伴い、特に単斜晶から正方晶への変換では約4％の体積縮小が観察されます。このため、ジルコニアを焼成する際には温度の変化が強度に影響を及ぼし、破壊のリスクが増すことがあります。

ジルコニアに酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化イットリウムといった希土類酸化物を添加すると、酸素空孔が形成され、立方晶や正方晶が室温で安定または準安定となることが可能です。このようにして得られたジルコニアは「安定化ジルコニア」と呼ばれ、昇温降温の影響での劣化を少なくすることができます。

安定化ジルコニアの特性

安定化ジルコニアは、未添加のジルコニアに比べて、特に強度や靭性に優れた特性を持ちます。これは、亀裂が生じる際にその伝播を正方晶から単斜晶への相変態によって制御することができ、亀裂先端での応力を軽減するためです。このメカニズムは、「応力誘起相変態強化機構」と称され、その効力によって、最大で正方晶が40％まで単斜晶に変わることが可能です。

さらに、完全に相変態を抑制した安定化ジルコニアよりも、わずかに変態を許す部分安定化ジルコニアの方が、機械的特性において優れた性能を示すことが注目されています。

特にイットリア安定化ジルコニア（YSZ）は、イオン伝導性が高く、高温で固体電解質となります。この特性から、YSZは燃料電池や酸素センサなど、先端技術の材料として非常に重要な役割を果たしています。さらに最近では、金属に代わる歯科治療材料としても関心を集めています。

立方晶ジルコニアについて

立方晶安定化ジルコニア（立方晶ジルコニア、CZ）は、ジルコニアにイットリウムやカルシウム、マグネシウム、ハフニウムなどを4から15パーセントの割合で添加することで得られます。この材質は、モース硬度が8から8.5の範囲で、サファイヤやルビーといったコランダムに次ぐ硬度を持ちます。その上、ダイヤモンドと同程度の高い屈折率も特徴的であるため、主に宝飾品に利用されます。

立方晶ジルコニアは安価で生産しやすく、その価格は1カラット当たり1ドル以下と手頃です。また、加える金属元素によって多様な色合いが得られることから、赤、橙、青、緑、ピンク、琥珀等、多彩な宝石の選択肢ともなっています。こうした特性から、ジルコニアは宝飾業界だけでなく、技術産業においても非常に需要の高い素材となっています。

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