ジークフリート・パルム

ドイツのチェリスト、ジークフリート・パルム（1927年4月3日 - 2005年6月6日）は、現代音楽の卓越した演奏家として国際的に知られ、教育者やオペラ演出家としても多大な足跡を残した人物です。

パルムは1927年4月25日、バルメン（現在のヴッパータール）に生を受けました。チェロ奏者であった父親から6歳の時に楽器の手ほどきを受け、早くも14歳でソリストとしての舞台を踏みました。

18歳でリューベック市立管弦楽団の首席チェロ奏者となり、さらに2年後の1947年には北ドイツ放送交響楽団に移籍し、1962年までの15年間、首席奏者を務め上げました。この時期、彼はベルンハルト・ハマンが主宰するハマン弦楽四重奏団の一員として、現代音楽の演奏にも積極的に取り組みました（1951年〜1962年）。また、1950年から1953年にかけては、ザルツブルクやルツェルンで名匠エンリコ・マイナルディのマスタークラスに参加し、自身の技量を高めました。

1962年、パルムは活動の場をケルンに移し、ケルン放送交響楽団のチェロ奏者となる傍ら、ケルン音楽院の教授に着任しました。教育者としての指導力も高く評価され、1972年には同音楽院の学長に任命され、1978年までその重責を担いました。ケルン滞在中には、作曲家のカールハインツ・シュトックハウゼンとの親交を深めました。なお、ケルン放送交響楽団からは1968年に退団しています。

教育活動はケルンに留まらず、国際的にも展開しました。ストックホルム王立音楽院では客員教授を務め、ダルムシュタット現代音楽祭では講師として後進を指導しました。さらにオランダやアメリカでも教鞭をとるなど、その教育範囲は広範に及びました。

1975年からはオペラの世界にもその手腕を発揮し、ベルリン・ドイツ・オペラの総監督として招聘されました。1976年からは自らもオペラ演出を手がけ、ベルリン・ドイツ・オペラにおいてヒンデミットの《カルディヤック》やオッフェンバック作品など、様々なプロダクションを生み出しました。演出家としての活動には1980年ごろまで特に力を入れていました。また、1977年からはベルリン芸術大学の教授も兼任しました。

1981年ごろからはチェロ奏者としての演奏活動を再び精力的に行い、国際的な舞台でその芸術を披露しました。1982年から1988年までは、国際現代音楽協会の理事も務め、現代音楽の普及・振興に貢献しました。

パルムは、現代音楽の最も重要な擁護者の一人としてその名を馳せました。ダルムシュタット現代音楽祭での講師経験に代表されるように、現代作品の演奏に生涯を捧げました。彼の師であるエンリコ・マイナルディは、パルムが「最も難しい現代作曲家のチェロ作品を演奏するための技術を私から学んだ」と認めつつも、彼自身が「新しい可能性を開拓したことは驚嘆に値する」とそのパイオニア精神を高く評価しています。1965年以降は、ピアニストのアロイス・コンタルスキーらと共に現代音楽の演奏に一層積極的に取り組みました。チェリストのユリウス・ベッキは、パルムが演奏した42曲の協奏曲のうち29曲が現代作品であったことを挙げ、「新しい、前衛的な作品に取り組む勇気、実験的作品に対する喜び、息をのむばかりのテクニックをもって、常に新しい音の世界へ突き進んでいる」とその貢献を称えました。こうしたパルムの卓越した技術と献身は、ボリス・ブラッハー、マウリシオ・カーゲル、ジェルジュ・リゲティ、ミルコ・ケレメン、ヤニス・クセナキス、尹伊桑、ベルント・アロイス・ツィンマーマン、クシシュトフ・ペンデレツキといった、当時の主要な作曲家たちの創作意欲を刺激し、彼らがパルムのために楽曲を献呈するほどでした。

一方で、パルムは現代音楽のみに偏っていたわけではありません。ベッキが記した彼の言葉には、「古典とロマン派のチェロ作品の演奏こそが本来の使命であり、新しいチェロ作品の演奏は道楽である」「チェロの演奏技術を新しい作品のみで習得できると考える人々は、およそ原点に立ち返って学ぶべきだ。そうでないすべてのやり方は混乱を招くだけだ。ロンベルク（古典派のチェロ奏者・作曲家）なくしてペンデレツキは存在しない」とあり、伝統的なレパートリーの重要性を強く認識し、基礎に根差した技術の習得を重視していたことがうかがえます。これは、最先端の音楽を探求しつつも、揺るぎない伝統の上に立つ、パルムの深い芸術家精神を示しています。

パルムの功績は、数多くのレコード録音によっても広く認められました。1969年には「ドイツ・レコード賞」を、1972年には「国際レコード大賞」を受賞しています。

2005年6月6日、彼はフレッヘンにてその生涯を終えました。

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