ジーン・フルマー

ジーン・フルマー (Gene Fullmer)

ジーン・フルマーは、1931年7月21日にユタ州ウエストジョーダンで生まれ、2015年4月27日に83歳で生涯を閉じた、アメリカ合衆国が誇る元プロボクサーです。ミドル級の舞台で活躍し、世界チャンピオンの栄誉に輝きました。特に、NBA世界ミドル級王座を7度にわたって防衛した実績は、彼の輝かしいキャリアの中でも特筆すべきものです。

栄光への軌跡

フルマーのプロボクシングキャリアは、1951年に始まりました。デビュー直後からその強烈なパンチ力を遺憾なく発揮し、驚異的な11連続KO勝利を飾り、関係者やファンの注目を一気に集めます。

世界王座獲得と「天才」との激突

プロデビューから数年後、フルマーはミドル級のトップ戦線に浮上します。そして、1957年1月2日、彼はボクシング史上最高の選手とも評される「天才」シュガー・レイ・ロビンソンと世界ミドル級タイトルをかけて対戦しました。下馬評を覆し、この一戦でフルマーはロビンソンから歴史的な判定勝利をもぎ取り、ついに世界ミドル級チャンピオンのベルトを巻いたのです。これは、フルマーのキャリアにおける最大の金星であり、彼の名を世界に知らしめた瞬間でした。

しかし、王座獲得からわずか数ヶ月後の同年5月1日に行われたロビンソンとの再戦では、状況が一変します。ロビンソンが放った、タイミング抜群の左フックのカウンターを浴びてフルマーはKO負けを喫し、わずか4ヶ月あまりで世界王座から転落することとなりました。

NBA王座の獲得と驚異的な防衛記録

最初の世界王座陥落後も、フルマーはミドル級戦線で粘り強く戦い続けます。1959年8月28日、NBA（ナショナル・ボクシング・アソシエーション）が防衛戦を行わなかったロビンソンから剥奪したミドル級タイトルを、カーメン・バシリオと争う機会を得ます。バシリオはフルマーと同じく猛烈なファイターとして知られていましたが、フルマーは壮絶な打ち合いの末、14ラウンドTKOでバシリオを破り、NBA世界ミドル級チャンピオンの座を獲得しました。

このNBA王座を獲得してからのフルマーは、まさに盤石の強さを誇りました。彼はバシリオとの再戦はもちろんのこと、再びリングで相見えたシュガー・レイ・ロビンソン、ウェルター級の世界王者だったベニー・パレット、後に世界チャンピオンとなるジョーイ・ジャーデロ、そしてキューバの強力な左フッカーであるフローレンチノ・フェルナンデスなど、当時ミドル級および近辺の階級で名を馳せていた強豪たちを次々と退け、合計7度にわたる王座防衛を達成しました。この連続防衛記録は、フルマーのタフネスと実力を証明する揺るぎない証です。

王座陥落、そして引退

フルマーの長きにわたるNBA王座時代は、1962年10月23日に終焉を迎えます。当時台頭してきたナイジェリアの英雄ディック・タイガーとの対戦で、フルマーは判定負けを喫し、王座を失いました。王座奪還を目指したフルマーは、その後二度にわたってタイガーに挑みますが、一度目は引き分け、二度目は7ラウンドKO負けと、ベルトを取り戻すことは叶いませんでした。

タイガー戦での敗北後、フルマーは現役を引退。リングを離れた後も、ボクシング界と関わりを持ち続けたと言われています。そして、2015年4月27日、83歳でその波乱万丈な生涯に幕を下ろしました。

通算戦績

ジーン・フルマーのプロキャリア通算戦績は、以下の通りです。

試合数: 64戦
勝利: 55勝 (うち24KO)
敗戦: 6敗
引き分け: 3引分け

KO率は約4割と、必ずしも一撃必殺の強打者というわけではありませんでしたが、彼の真骨頂は相手の攻撃にも屈しない驚異的なタフネスと、休むことなく攻め続ける relentless（粘り強い）なファイトスタイルにありました。フルマーは、その不屈の精神と圧倒的なスタミナで、多くの強敵を打ち破り、ミドル級の歴史にその名を刻んだ偉大なチャンピオンです。

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