スイス・フラン

スイスフラン：安定を誇る国際通貨

スイスフランは、スイスとリヒテンシュタインの公式通貨であり、イタリアの飛び地カンピョーネ・ディターリアでも使用され、ドイツの飛び地ビュージンゲンでは非公式通貨として流通しています。通貨記号はFr.、SFr.、またはCHF（Confoederatio Helvetica Francの略）で、ISO 4217通貨コードはCHFです。補助単位は、1フランの100分の1であるラッペン（ドイツ語）、サンチーム（フランス語）、チェンテージモ（イタリア語）、ラップ（ロマンシュ語）です。

国際通貨としてのスイスフラン

スイスフランは、歴史的にイギリス・ポンド、ドイツ・マルク、フランス・フランと並ぶ主要国際通貨でした。ユーロ誕生後も、スイスの中立国としての地位から「金よりも堅い」と言われるほど安定した通貨としてその地位を維持しています。戦争や金融危機時には安全資産、避難通貨として機能し、需要が高まるため、相場が上昇する傾向があります。取引量は、米ドル、ユーロ、日本円、英ポンドに次ぐ規模で、国際決済通貨としても広く利用されています。経済不安定な国では、米ドルの代替として貿易決済などに使用されるケースも多いです。

歴史：銀本位制から金本位制へ

1848年のスイス連邦成立後、1850年にスイスフランが制定されました。当初はフランス・フランにならった銀本位制でしたが、1865年にはラテン通貨同盟に加盟、1876年には金本位制に移行しました。ラテン通貨同盟加盟国間の意見対立により、金銀複本位制となりました。この過程で、硬貨のデザインや材質に変更が加えられています。リヒテンシュタインでは、第一次世界大戦後、スイスとの経済的つながりが強まり、スイスフランを導入しました。現在では、記念硬貨を除き、スイスの硬貨と紙幣が流通しています。

2015年のスイスフランショック

2015年1月15日、スイス国立銀行が1ユーロ＝1.2スイスフランというユーロに対する上限を撤廃したことにより、スイスフランが急騰しました。この出来事（スイスフランショック）は、世界中の株式市場の下落、外国為替証拠金取引の混乱、大手両替商の倒産など、大きな金融市場の混乱を引き起こしました。フラン/円レートは短時間で大きく変動し、市場参加者に大きな損失を与えました。

硬貨：歴史とデザイン

現在流通している硬貨は、5、10、20ラッペンと1/2、1、2、5フランの7種類です。過去には1ラッペンと2ラッペン硬貨も存在しましたが、流通停止となっています。硬貨の材質は、時代とともに銅、亜鉛、洋銀、白銅、ニッケル、アルミ黄銅など多岐に渡り、近年は自動販売機やATMの普及に伴い、材質変更が行われています。2フラン以下の硬貨のデザインは1870年代から変更されておらず、ヘルヴェティア女神が描かれています。5フラン硬貨はウィリアム・テルがデザインされています。また、10フラン、20フランなどの金貨も過去には発行されていました。

記念硬貨と紙幣

スイスでは、様々な記念硬貨が発行されており、特に射撃大会記念硬貨はコレクターに人気があります。近年は毎年多くの記念硬貨が発行され、銀行や造幣局のウェブ通販で購入できます。紙幣は、スイス国立銀行から10、20、50、100、200、1000フランの紙幣が発行されています。500フラン紙幣は発行停止となっています。

為替レートと外貨準備

スイスフランの為替レートは変動相場制となっており、歴史的に円安時には高騰する傾向があります。2008年には、初めて米ドルとレートが同値になりました。スイスフランは世界中で外貨準備として利用されており、2011年には第5位の通貨でした。

まとめ

スイスフランは、その歴史と安定性から、国際通貨として重要な役割を果たしています。しかし、2015年のスイスフランショックに見られるように、為替レートは常に変動するリスクがあるため、注意が必要です。硬貨や紙幣のデザイン、材質、発行枚数、記念硬貨なども含め、スイスフランは歴史と文化が凝縮された、興味深い通貨です。

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