スウィングル・シンガーズ

ザ・スウィングル・シンガーズ：革新的なア・カペラ・グループ

ザ・スウィングル・シンガーズ（The Swingle Singers）は、アメリカ出身の音楽家ワード・スウィングルが1962年にフランス・パリで結成したア・カペラ・ヴォーカル・グループです。結成当初のメンバーには、アンヌ・ジェルマン、ジャネット・ボーコモン、ジャン・キュサックなどがおり、ミシェル・ルグランの姉であるクリスチャンヌ・ルグランがリード・ソプラノを務めていました。

グループの概要

8人編成で、ソプラノ、アルト、テノール、バスがそれぞれ2名ずつという構成です。ジャズのスキャット唱法を男女混声合唱に取り入れた独特のサウンドは、ジャズとクラシックの両分野から革新的で新鮮なものとして評価されました。彼らの音楽は一般にも理解しやすく、「ダバダバ」コーラスとして広く知られています。

レパートリーは非常に幅広く、バッハをはじめとするクラシック音楽から、ビートルズやビージーズなどの現代ポップス、スタンダードナンバーまで、多彩な楽曲を複雑かつテクニカルに、そして印象的にカバーしています。アレンジはジャズの和声法やスタイルを基調としており、ナット・キング・コールのような洗練された歌手やピアニストの影響も見て取れます。

歴史

スウィングル・シンガーズは、もともとワード・スウィングルが率いるセッション・シンガーとして活動を始めました。彼は、フランスのヴォーカル・グループ「レ・ドゥブル・シス」に在籍していました。当初はシャルル・アズナヴールやエディット・ピアフなどのバックで歌っていましたが、ミシェル・ルグランがハリウッドへ移ると、スウィングルは新たな活動の場を模索し、J.S.バッハの『平均律クラヴィーア曲集』に注目しました。この作品をア・カペラで演奏したアルバム『Bach's Greatest Hits』が、グループの大きな転機となり、大ヒットを記録しました。

1967年には、ラヴェルの「亡き王女のためのパヴァーヌ」を録音しようとしましたが、版権所有者の反対により、ロドリーゴの「アランフェス協奏曲」に差し替えられました。その後も「亡き王女のためのパヴァーヌ」は演奏会で取り上げられていますが、レコードやCDで発売されることはありませんでした。

また、モダン・ジャズ・カルテット（MJQ）と共演したJ.S.バッハの「G線上のアリア」も大ヒットしました。ルチアーノ・ベリオのポストモダン交響曲『シンフォニア』は、スウィングル・シンガーズを念頭に置いて書かれ、オリジナル録音にも参加しています。その他、現代音楽作曲家ベン・ジョンストンの作品もレコーディングしています。

スウィングル・シンガーズの活動は、1962年から1973年までフランスを拠点とした第一期と、1973年以降、イギリスを拠点とした第二期に分けることができます。第二期では、スウィングルII、ザ・スウィングルズ、ザ・ニュー・スウィングル・シンガーズという名前を使用することもありました。

現在の活動

現在は、ロンドンを拠点に活動しています。基本的にはア・カペラでの演奏ですが、時にはベースやドラムスなどの伴奏を使用することもあります。1988年にはスタイル・カウンシルと、1996年にはフランスのポップスター、エティエンヌ・ダオーと共演するなど、ジャンルを超えたコラボレーションも積極的に行っています。

クラシック音楽への取り組みも継続しており、2005年に録音したJ.S.バッハの『平均律クラヴィーア曲集』から「前奏曲 ヘ短調」は、ウェールズのシンガーソングライター、Jemのヒット曲「They」で使用され、映画「The Gigolos」にも使われました。また、同じ年に録音したJ.S.バッハの「フーガ BWV578」も、映画「サンキュー・スモーキング」で使用されています。

近年のアルバムとしては、「Concerto d'Aranjuez」（2004年）、「American Look」（2005年）、「ダバダバ・スウィング」（2006年）、「Unwrapped」（2006年）、「ゴーイング・バロック～サン・ピエトロ作戦」（2007年）などがあります。

現在のメンバー

現在のメンバーは以下の通りです。

ジョアンナ・ゴールドスミス（ソプラノ）
ジュリー・ケンチ（ソプラノ）
クレア・ホイーラー（アルト）
ジョアンナ・マーシャル（アルト）
リチャード・エテソン（テノール）
トム・バラード（テノール）
ケヴィン・フォックス（バス）
トバイアス・ハグ（バス)

スウィングル・シンガーズは、その革新的な音楽性と幅広いレパートリーで、世界中の音楽ファンを魅了し続けています。

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