スコルディスキ

スコルディスキ：古代バルカンのケルト系民族

スコルディスキ（ギリシア語: Σκορδίσκοι）は、古代にバルカン半島に存在したケルト系の民族です。彼らは、現在のセルビアを中心とした地域に居住し、紀元前3世紀初頭から紀元前後の時代にかけて歴史に名を残しました。

出自の謎

スコルディスキの出自については、歴史学者の間で様々な議論があります。ケルト人、トラキア人、イリュリア人、あるいはこれらの民族の混血など、様々な説が唱えられています。彼らは、バルカン半島に侵入したケルト人が、現地の住民と混ざり合って形成された民族であると考えられています。

一部の研究者は、スコルディスキが本来ケルト人ではなかったものの、「ケルト的政治体制」を採用したと指摘しています。紀元前278年以降、バルカン半島へのケルト人進出で生き残った少数のケルト人が、この地域の支配階級として定住し、民族が形成されたという説もあります。彼らは数に勝る原住民に比較的早期に吸収されたと考えられますが、ケルト的な民族名はイリュリア語化した Scordistae として残り、紀元前2世紀によく使われました。

歴史

紀元前278年に形成された後、スコルディスキはパンノニアを中心とした地域の支配を確立することに注力しました。パンノニアの諸民族を支配下におさめ、年貢を納めさせるようになり、バルカン中央部で最も強大な民族となりました。シンギドゥヌムとタウルヌム（共に現在のベオグラード）に要塞を築き、その勢力を誇示しました。

しかし、ローマが勢力を拡大してくると、スコルディスキはローマと対立するようになります。紀元前141年以降、スコルディスキはローマの支配下に入ったマケドニア属州と定期的に戦うようになりました。彼らはしばしば侵略を繰り返し、マケドニア属州のローマ人支配者にとって頭痛の種でした。デルポイまで侵入し、神殿から略奪したこともあります。

紀元前88年、ルキウス・コルネリウス・スキピオ・アシアティクスによってスコルディスキは打ち破られ、ドナウ川の北に追いやられました。その後、スコルディスキの勢力は急速に衰退しました。これは、ローマによる遠征の結果というよりも、スコルディスキに支配されていた各部族が力をつけ、スコルディスキから独立した結果でした。

紀元前15年、ティベリウスによってスコルディスキは撃破され、ローマに従うようになりました。彼らはローマの傭兵として働き、パンノニア平定に協力しました。トラヤヌス帝の時代には、ローマ市民権を得るようになり、ローマ化が進みました。ローマ化の進行とともに、彼らの政治的独立性は失われていきました。

文化

スコルディスキは、独自の文化を持っていました。現地生産されたラ・テーヌ文化に属する工芸品が出土しており、特にパンノニアやモエシア北部に多く、ケルト人の定住と文化的交流の濃さを示しています。彼らは、金属加工や農業に長けており、交易を通じて富を蓄積していました。

彼らの宗教については、詳しいことは分かっていません。しかし、ケルト的な神々を崇拝していたと考えられています。また、彼らは、戦士としての誇りを重んじ、勇敢な戦士を英雄として称えました。

まとめ

スコルディスキは、古代バルカン半島に存在したケルト系の民族です。彼らは、一時はバルカン中央部で最も強大な民族となりましたが、ローマとの戦いに敗れ、次第に衰退していきました。しかし、彼らの文化は、バルカン半島の歴史に大きな影響を与えました。

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