マケドニア属州

マケドニア属州：ローマ帝国における重要な拠点

マケドニア属州は、古代ローマ帝国の属州の一つであり、現在のギリシャ、ブルガリア、北マケドニアの地域にまたがる広大な領土を擁していました。その歴史は、マケドニア王国のローマによる征服に始まり、長く複雑な発展を遂げました。

ローマ支配の開始と属州の成立

紀元前168年、第三次マケドニア戦争でアンティゴノス朝がローマに敗北した後、マケドニアは一時的に4つの共和国に分割され、ローマの保護領とされました。しかし、紀元前148年にマケドニア人が反乱を起こしたため（第四次マケドニア戦争）、ローマはこれを鎮圧。紀元前146年、ローマはマケドニアを正式に属州化しました。この際、エピルス、テッサリア、イリュリア、トラキアの地域も編入され、属州の領域はさらに拡大しました。テッサロニカ（現在のテッサロニキ）が属州の行政中心地として選ばれました。同時期に、コリントスの破壊とアカイア属州の設置もローマのギリシャ支配を強固にしました。

行政区分の変遷

マケドニア属州は、当初は一つのまとまった行政単位でしたが、3～4世紀頃には、南部のマケドニア・プリマと北部のマケドニア・サルタリスという2つの属州に分割されました。テトラルキア（四頭政治）体制の下、318年には行政区域が再編され、マケドニア・プリマとマケドニア・サルタリスはマケドニア管区に組み込まれました。さらに、ローマ帝国が4つの統治領に分割された際、マケドニア管区はイリュリクム統治領に属することとなりました。379年のイリュリクム統治領の東西分割、そして395年のローマ帝国の東西分割を経て、マケドニアは東ローマ帝国（ビザンツ帝国）の支配下に入りました。

経済的繁栄と交易

アウグストゥス帝の治世以降、マケドニア属州は長く平和な時代を迎え、経済的にも繁栄しました。小アジアほどの規模ではありませんでしたが、ローマ帝国全体にとって重要な経済圏でした。エグナティア街道の建設は、ローマ商人の活動やローマ人の入植を促進し、経済発展を加速させました。

ローマ帝国による統治は、マケドニアに新しい道路網や行政制度をもたらしただけでなく、様々な階層の住民に繁栄をもたらしました。肥沃な農地と牧草地は、大規模な地主による農業経営を支え、奴隷制度の下で大きな富が蓄積されました。生産者階級の生活水準向上は、技術者や工芸師の増加につながり、石工、炭鉱夫、鍛冶屋など様々な職種が雇用を生み出しました。ギリシャ人は、家庭教師、教師、医師などとしてローマ世界で活躍しました。

マケドニア属州の主要な輸出品は農産物と家畜でしたが、鉄、銅、金などの鉱物資源、木材、松やに、油、麻、魚介類なども輸出されていました。ディオ、ペッラ、テッサロニキ、カッサンドレアなどの港湾都市は、貿易の中心地として繁栄し、属州の経済に大きく貢献しました。マケドニア属州は、ローマ帝国の経済発展に重要な役割を果たした地域であったと言えるでしょう。

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