スズキ・キザシ

スズキ キザシ：挑戦の軌跡

スズキ キザシは、同社が製造・販売していたセダンであり、欧州市場ではDセグメントに分類されていました。その開発は、スズキがグローバル市場でのプレゼンスを強化しようとする意欲の表れであり、その名「キザシ」には、新しいクルマ作りに挑戦する兆しという意味が込められています。

開発と展開

キザシは、2009年7月に米国スズキが発表し、同年10月には日本国内で完全受注生産を開始しました。その後、北米、欧州、中国市場へと展開されました。北米市場では、複数のグレードが設定され、多様な装備が用意されました。生産は静岡県のスズキ相良工場で行われ、当初は北米市場にも展開されましたが、後に同市場から撤退したため、日本、欧州、中国向けの車種となりました。

警察車両としての採用

2013年からは、日本の警察における捜査車両としても導入されました。スズキとしては初のこのクラスでの導入であり、市販車とは異なる装備が施されました。2014年には、一部警察本部に白黒パトカー仕様も配備され、その導入台数は908台に達し、これは日本国内におけるキザシの総登録台数の4分の1以上を占めるほどでした。

デザインとコンセプト

エクステリアデザインは「ダイナミックアスリートインモーション」をテーマに、アスリートの躍動感を表現しています。シャープなエッジを抑え、曲線で構成されたデザインが特徴です。スズキのフラッグシップ車として開発されましたが、セダン人気の低迷と「スズキ＝軽自動車」というイメージを払拭できず、販売は不振に終わりました。

販売終了とその後

国内市場での生産は2015年10月に終了し、同年12月末には販売も終了しました。国内での登録台数は約3300台（パトカー仕様を除く）にとどまり、月間販売台数はわずか30台程度でした。モデルライフ中に特別仕様車の追加や内外装の改良は一度も行われませんでした。スズキはその後、フラッグシップ車をミニバン「ランディ」に移行し、セダン市場から事実上撤退することになりました。

コンセプトカー

キザシには複数のコンセプトカーが存在します。「コンセプト・キザシ」は、2007年のフランクフルトモーターショーで発表され、ハッチバックとワゴンのクロスオーバーモデルでした。その後、「コンセプト・キザシ2」はクロスオーバーSUVテイストにまとめられ、「コンセプト・キザシ3」はセダンとして市販モデルにつながるスタイルとなりました。

メカニズム

エンジンは2.4L直列4気筒DOHCエンジンを搭載し、CVTまたは6速MTが組み合わされます。駆動方式はi-AWDを採用した4WDとFFが用意され、サスペンションは前がマクファーソンストラット式、後ろがマルチリンク式です。ブレーキは曙ブレーキ工業製の4輪ディスクブレーキが採用されました。

2010年には、アクティブクルーズコントロールシステムと衝突被害軽減ブレーキがメーカーオプションとして設定されました。また、当初はハイブリッドモデルも開発される予定でしたが、実現には至りませんでした。

ボンネビル・スピードウィークへの挑戦

2010年には、ボンネビル・スピードウィークにターボチャージャーを追加したキザシで挑戦し、クラス新記録となる約328km/hを達成しました。この挑戦は、キザシの持つポテンシャルを示すものでした。

車名の由来

車名の「キザシ」は、世界市場に向けた新しいクルマ作りに挑戦するという意味が込められています。その名は仕向け地に関わらず共通で、「Kizashi」と表記されます。

キザシは、スズキの挑戦と苦悩を象徴する一台として、その名を歴史に刻んでいます。

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