スタヴィスキー事件

スタヴィスキー事件：フランス第三共和政を揺るがした大スキャンダル

1933年末、フランスで発生したスタヴィスキー事件は、単なる金融犯罪にとどまらず、当時の政権基盤を揺るがし、フランス社会に大きな衝撃を与えた歴史的事件です。ウクライナ出身のセルジュ・アレクサンドル・スタヴィスキーは、バイヨンヌ市立信用金庫を設立し、巨額の債券を発行する一方で、担保として提示された宝石は模造品であるなど、多くの不正行為を行っていました。

事件の発覚と政治への波及

1933年末、バイヨンヌ市立信用金庫の倒産によって、スタヴィスキーの詐欺行為が発覚します。当初は小さな事件として扱われましたが、多くの政治家が関与していたことが明らかになるにつれ、事件は急速に拡大。世論の怒りは爆発し、政府への不信感が高まりました。

特に、当時のカミーユ・ショータン内閣の植民相アルベール・ダリミエが、償還不能な債券を推奨していた事実が暴露されたことで、政府は大きな批判を浴びることとなりました。ダリミエは辞任に追い込まれ、ショータン内閣自体も激しい批判に晒されました。

スタヴィスキーの死と真相不明

事件発覚後、スタヴィスキーはパリを脱出しようとしますが、スイス国境付近で射殺体で発見されます。警察は自殺と発表しましたが、多くの人は、政界上層部による口封じではないかと疑念を抱きました。この事件の真相は、いまだに議論の的となっています。

ショータン内閣の総辞職とその後

世論の反発は、国粋主義団体による政府批判へと発展。アクション・フランセーズやクロア・ド・フーなどの国粋主義団体は、左派・右派を問わず政治家の関与を糾弾し、ショータン内閣を総辞職に追い込みました。

その後、エドゥアール・ダラディエ内閣が成立しますが、警視総監の解任を巡る混乱や、国粋主義団体による大規模な反政府デモ（2月6日の危機）により、ダラディエ内閣も短期間で崩壊。ガストン・ドゥメルグ内閣が発足しましたが、今度は左派勢力からの反発を受け、フランス社会は激しい政治的混乱に陥りました。

事件の影響とその後

スタヴィスキー事件は、フランス社会に大きな影響を与えました。この事件は、当時の政権の腐敗を露呈させ、左右両翼の対立を激化させました。事件をきっかけに、共産党と社会党が接近し、のちの人民戦線の成立につながるなど、フランス政治の大きな転換点となりました。

また、事件捜査に携わったピエール・ボニー警部は、のちにナチス・ドイツに協力したことが発覚し、戦後処刑されるなど、事件は多くの悲劇を生みました。

スタヴィスキー事件は、アラン・レネ監督の映画『薔薇のスタビスキー』や、久生十蘭の小説『十字街』など、多くの芸術作品にも題材として取り上げられ、現在でも人々の記憶に深く刻まれています。この事件は、政治腐敗への国民の怒りと、民主主義の脆弱さを浮き彫りにした歴史的な出来事であり、現代社会においても重要な教訓を与えてくれるでしょう。

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