スティング (ミュージシャン)

スティング

スティング（Sting, 本名：ゴードン・マシュー・トーマス・サムナー）は、1951年10月2日にイングランドで生まれた、世界的に著名なミュージシャン、シンガーソングライター、そして俳優です。彼のステージネームである「スティング」は、「ちくりと刺す」という意味を持ち、ポリス結成以前のライブで、蜂を連想させる黄色と黒のストライプ柄の衣装を好んで着用していたことに由来すると言われています。

キャリアの始まりとポリスでの成功

スティングは、カトリック系の男子校を卒業後、ウォーリック大学に進学しますが卒業には至りませんでした。その後、ノーザンブリア大学で学び、卒業後は小学校の美術教師として教壇に立ちました。しばしば「高校教師」という曲のタイトルから高校教師だったと誤解されますが、この曲は教育実習での経験に着想を得ていますが、彼自身はフィクションであると語っています。

音楽への興味はビートルズやキンクスから始まり、ボブ・ディランやジャズの巨匠たちの影響を受けながら育ちました。教員養成大学在学中から地元のジャズセッションに積極的に参加し、ベーシストとしての腕を磨きました。ニューカッスル・ビッグ・バンドで初めてアルバムに参加し、その後ジャズ・フュージョン・バンド「ラスト・イグジット」を結成して活動しました。

1976年、ロンドンでの音楽活動を目指していたスティングは、彼のステージパフォーマンスに将来の可能性を見出したドラマー、スチュワート・コープランドに誘われます。これにより、ギタリストのヘンリー・パドゥバーニと共にロックバンド「ポリス」を結成しました。後にアンディー・サマーズが加入し4人編成となりますが、ヘンリーの脱退を経て、スティング、コープランド、サマーズのトリオとして活動を本格化させます。

ポリスはベーシスト兼ボーカリストであるスティングを中心に、独特のレゲエやジャズの影響を取り入れたロックサウンドで世界的な成功を収めました。「Roxanne」や「Every Breath You Take」といった数々のヒット曲を生み出し、グラミー賞も多数受賞しました。しかし、1984年にバンドの活動は休止状態に入ります。

ソロ活動と広がる音楽性

ポリスの活動休止後、スティングは1985年からソロアーティストとしての道を歩み始めます。ソロ転向後の初期は、ジャズミュージシャンを多く起用したアルバムを発表し、新たな音楽性を追求しました。ダイアー・ストレイツやマイルス・デイヴィスといった著名アーティストとのコラボレーションも行い、音楽家としての幅を広げました。

ソロキャリアにおいても、スティングは「Fields of Gold」、「Fragile」、「Englishman in New York」、「Shape of My Heart」など、世界中で愛される名曲を多数発表し、グラミー賞をはじめとする様々な音楽賞を受賞し続けました。特に1999年のアルバム『ブラン・ニュー・デイ』はグラミー賞の主要部門を受賞するなど高い評価を得ています。

ベーシストとしても非常に評価が高く、ポリス時代のアンサンブルに不可欠な存在でした。アコースティックで培われたダイナミズムと、ソウル、ラテンロック、レゲエ、ジャズといった多様な要素を取り入れた骨太でテクニカルな演奏スタイルは多くのベーシストに影響を与えました。

2000年代後半からはクラシック音楽への傾倒も見られ、名門ドイツ・グラモフォンからジョン・ダウランドのリュートソング集や、自身の曲のオーケストラアレンジアルバムなどをリリースし、クラシック界からも注目を集めました。

ポリス時代とソロ活動を合わせたアルバム総売上は1億枚を超え、時代を超えて影響力を持つアーティストとしての地位を確立しています。

俳優としての活動

スティングはミュージシャンとしての活動と並行して、俳優としても長いキャリアを持っています。1979年の『さらば青春の光』や1984年の『デューン／砂の惑星』など、多くの映画やテレビドラマに出演しています。また、ラジオドラマの音声出演やアニメの吹き替え（『キャプテン・プラネット』のザーム役）など、多岐にわたる役柄を演じています。

社会活動への献身

スティングは音楽活動のみならず、社会活動にも非常に熱心なことで知られています。1980年代から国際的な人権保護や環境保護活動に積極的に関わってきました。バンド・エイドへの参加や、チリのピノチェト軍事政権下での人権抑圧を歌った「孤独なダンス」など、音楽を通じて社会問題へのメッセージを発信しています。アムネスティー・インターナショナルの支持者であり、妻のトゥルーディー・スタイラーらと共にレインフォレスト・ファウンデーションを設立し、熱帯雨林保護活動を続けています。また、イルカ漁問題についても、来日公演時に言及するなど、継続的に関心を示しています。近年では、ロシアによるウクライナ侵攻を受けて、自身の楽曲「Russians」を通じて平和へのメッセージを表明するなど、その活動は現在も続いています。

私生活

スティングの妻は女優のトゥルーディー・スタイラーです。息子であるジョー・サムナーはミュージシャンとして活動しており、娘のエリオット・サムナーも歌手や俳優、モデルとして活躍しています。

日本との繋がり

スティングはこれまでに何度も日本を訪れ、数多くの来日公演を行っています。日本の企業CMへの楽曲提供や出演経験もあり、日本のファンにも深く愛されています。

主な受賞歴

スティングはキャリアを通じて、ポリスおよびソロ名義で多数の音楽賞を受賞しています。特にグラミー賞はポリス、ソロそれぞれで複数回受賞しており、その功績が広く認められています。また、英国女王陛下より大英帝国勲章（CBE）を授与され、ケネディ・センター名誉賞やポーラー音楽賞なども受賞しています。

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