スティーブ (大気現象)

スティーブ（STEVE）についての詳細

スティーブ（STEVE）は、主にカナダ・アルバータ州のオーロラ撮影者によって発見された夜空に現れる紫色の光の帯です。この現象は、欧州宇宙機関（ESA）の衛星Swarmのデータ分析を通じて、地上300kmの高温気体の帯であることが明らかになりました。スティーブは幅約25kmで、周囲の気体よりも迅速に10倍以上の速度で移動することがわかっています。この現象は普遍的に発生しているものであるにもかかわらず、発見されるまでその存在はほとんど知られていませんでした。

発見と命名の経緯

スティーブの発見は、Facebookグループ「アルバータ・オーロラ・チェイサーズ」のメンバーによってなされました。当初、彼らはこれを「プロトンアーク」と呼んでいましたが、カルガリー大学の地球物理学者ドノヴァンがこの観測された現象は陽子オーロラではないと指摘しました。陽子オーロラは肉眼で確認することができず、さらにその構造的特徴が異なるためです。

この情報を受けて、グループの一員であり管理者でもあるラツラフは、映画『森のリトル・ギャング』に登場する生垣の名前にインスパイアを受け、発光現象に「スティーブ」と命名することを提案しました。その後、NASAゴダード宇宙飛行センターのマクドナルドがこの現象の名称を正式に「STEVE」とし、略称が「Sudden Thermal Emission from Velocity Enhancement」または「Strong Thermal Emission Velocity Enhancement」となることが定められました。

スティーブの特徴と発生要因

スティーブは一見オーロラのように見えますが、色、持続時間、発生場所が明らかに異なります。主な特徴は以下の通りです：

• - スティーブは、通常のオーロラよりも赤道寄りで観測され、イギリスやカナダ、アラスカ、アメリカ北部、ニュージーランドでも確認されています。
• - この現象は、形状が細長く、何百kmもの距離にわたって東西に広がることがあります。
• - 発光は紫色を基調に、時には緑色の光線が現れ、通常20分から1時間程度で消えます。対照的に、オーロラは数時間持続することが多いです。
• - スティーブが観測されるとき、必ずオーロラも同時に現れますが、オーロラのみが発生することもあります。
• - スティーブは主に10月から2月には観測されないことが知られており、NASAはこれが特定の季節に関連する現象である可能性があると考えています。

ドノヴァンは、アルバータ・オーロラ・チェイサーズが撮影したデータを利用し、スティーブが発生する際の周囲の環境を解析しました。彼はスティーブが観測される領域で、最大5.5km/sという速さでイオンが流れ、絶対温度が最高6,000Kに達するという結果を得ました。さらに、この領域内では電子密度が低下することが示されたのです。

この研究により、スティーブは「サブオーロラ帯イオンドリフト（SAID）」という現象に関連していると考えられています。これは、狭い緯度幅に見られる高速のイオン流で、冬季にスティーブが観測されない理由とも関連しています。従来、功学的な現象がこれに伴って発生することは知られていなかったため、スティーブはこの新たな発光現象の初の記録として位置付けられています。

結論

スティーブという現象は、オーロラの一種と見なされることが多いですが、その実態は特徴的に異なることが明らかです。オーロラ撮影者たちの探求心により、未知の現象が学問的に解明されていく過程は、天文学研究における興味深い一例です。

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