ストックウェル (競走馬)

Stockwell：19世紀を代表するサラブレッドの帝王

19世紀中頃、イギリスで活躍した競走馬にして、種牡馬として後世に多大な影響を与えたのがストックウェルです。彼は2000ギニーとセントレジャーステークスを制し、クラシック二冠馬の称号を得ました。さらに種牡馬としても類まれな成功を収め、7度ものイギリスリーディングサイアーに輝いたことから「種牡馬の皇帝」と称えられるまでになりました。

輝かしい競走馬時代

ストックウェルは2歳から5歳にかけて20戦に出走し、12勝を挙げました。別の記録では16戦11勝という説もあり、英語版ウィキペディアでは後者の記録を採用しています。3歳時はエプソムダービーで敗れたものの、その他のレースでは圧倒的な強さを発揮し、13戦11勝という驚異的な成績を残しました。4歳時はロシアインペリアルプレート（現在のアスコットゴールドカップ）で2着に入賞しましたが、勝利を掴むことはできませんでした。5歳時は1戦のみの出場で、マッチレースに出走したものの対戦相手の故障により、そのまま引退することとなりました。

彼の競走成績を紐解くと、2000ギニーやセントレジャーステークスといった主要レースでの勝利が際立ちます。3歳時の活躍は特に注目に値し、主要競走で勝利を重ねた彼の強さが伺えます。一方で、4歳以降の成績は振るわず、競走馬としてのキャリアは比較的短期間で幕を閉じました。

種牡馬としての圧倒的な成功

競走馬としての引退後、ストックウェルは種牡馬として新たな伝説を築き上げました。その種牡馬成績はまさに圧巻で、7回ものリーディングサイアー獲得という偉業を達成しました。412頭の産駒のうち209頭が勝ち上がり、通算1147勝、総獲得賞金は362,451ポンドという驚異的な数字を記録しています。特に1866年の活躍は特筆もので、産駒の勝ち数は132、総獲得賞金は61,340ポンドに達し、この記録はその後68年間も破られませんでした。

彼の産駒には、ロードリヨン（三冠馬）、ブレアーアソール（エプソムダービー、セントレジャーステークス優勝、4度のリーディングサイアー）、ドンカスター（エプソムダービー、アスコットゴールドカップ優勝）、ザマークィス（英2000ギニー、セントレジャーステークス優勝）、アチーブメント（英1000ギニー、セントレジャーステークス優勝）、セントアルバンス（セントレジャーステークス優勝）など、数々の名馬が名を連ねています。クラシック競走優勝馬を12頭輩出したのは、サドラーズウェルズと並び歴代最多であり、産駒の勝利数はセントサイモンと並ぶ史上最多記録を誇ります。

現代への遺伝的影響

ストックウェルの影響は現代のサラブレッドにも及んでいます。ヴァイエの標準ドサージュでは340という数値が与えられており、19世紀の種牡馬の中ではセントサイモン、ガロピン、タッチストンに次ぐ高い評価を受けています。彼の父系はドンカスターの仔であるベンドアを通じて大きく発展し、現代のサラブレッドの主要な血統であるファラリス系とオーム系の両方にその血を受け継いでいます。

2018年のシドニー大学を中心とした研究グループの報告によると、2000年から2011年にオーストラリアで走ったサラブレッド13万5572頭の血統と、その中から抽出した128頭の常染色体塩基配列を解析した結果、これらの馬に対するストックウェルの血統的影響は8.3%に達したとされています。これはヴァイエの標準ドサージュの値と一致しており、その遺伝的な影響の大きさを示しています。しかし、同一系統対立遺伝子の遡及系統解析によると、ストックウェルの遺伝子を多く持つ個体は競走能力が低い傾向が見られたという報告もあります。これは、ストックウェルの母親が患っていた喘鳴症の遺伝子が影響している可能性が示唆されています。ストックウェル自身は喘鳴症を発症していませんでしたが、子孫に喘鳴症の症状が現れる確率が高かったことが原因と考えられています。

ストックウェルは競走馬、種牡馬として、そしてその遺伝子を通じて、サラブレッドの歴史に永遠にその名を刻む存在と言えるでしょう。彼の血統は、現代の競走馬の多くに受け継がれ、その影響はこれからも長く続くと考えられます。

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