ベンドア

ベンドア：エプソムダービー王者とその血統の謎

ベンドアは、1880年代のイギリスを代表する競走馬にして、種牡馬として現代競馬の礎を築いた名馬です。その名を冠した紋章学由来の名称、そして、黒い斑点のある珍しい毛色「ベンドア斑（バードキャッチャー斑）」を持つ尾花栗毛の馬体（約164cm）は、多くの関係者の記憶に刻まれました。

華々しい競走馬としてのキャリア

2歳時は5連勝を飾り、卓越した瞬発力を示しました。しかし、3歳シーズンは脚部不安に悩まされ、エプソムダービーへの出場は危ぶまれました。さらに、レース25日前には主戦騎手フレッド・アーチャーが負傷するというアクシデントに見舞われます。アーチャーは痛みを堪え、エプソムダービーに騎乗。観衆の圧倒的な支持（3倍人気）に応え、片腕での騎乗ながらロバートザデヴィルをアタマ差で退け、ダービーを制覇するという伝説を刻みました。

ダービー優勝後、替え玉疑惑が浮上しますが、当時の調査では否定されました。しかし、近年のDNA調査により、ベンドアと別の馬タドカスターが入れ替わっていた可能性が示唆されています。タドカスターは、ベンドアと同じく初代ウェストミンスター公爵の所有馬で、外見もよく似ていました。馬丁の死の床での告白を根拠に疑惑が持ち上がりましたが、当初は否定されました。しかし、ベンドアの骨格から採取されたミトコンドリアDNAが、血統書上の母系とは異なる系統に属することが判明し、入れ替わり説が有力となっています。ダービー勝利後も活躍は続き、セントジェームズパレスステークスを制し、その後も数々のレースで好成績を残しました。

種牡馬としての成功と現代競馬への貢献

引退後は種牡馬として活躍し、イギリスクラシック三冠馬オーモンド、2000ギニー優勝馬ボナヴィスタなど、数々の優秀な産駒を輩出しました。同時代のセントサイモンにはリーディングサイアーの座を譲りましたが、その血統は現代競馬に大きな影響を与え、ノーザンダンサー、ナスルーラ、ミスタープロスペクターといった名馬につながっています。オーモンド系、ボナヴィスタ系は、それぞれ現在のサラブレッドの主流血統を形成する上で重要な役割を担っています。

ベンドアの謎：替え玉疑惑の真相

ダービー後の替え玉疑惑は、ロバートザデヴィルの馬主による賞金支払いの拒否という形で表面化しました。当初、調査では否定されましたが、現代科学であるDNA鑑定技術を用いた調査の結果、ベンドアとタドカスターの入れ替わりが示唆される結果となりました。ミトコンドリアDNAの解析で、ベンドアの骨格が血統書上の母系とは異なる系統に属することが判明したのです。この結果は、ベンドアとタドカスターが入れ替わったという、長年の謎を解き明かす大きな一歩となりました。しかし、入れ替わっていても、ダービーを制し種牡馬として成功を収めたのはベンドアであるという事実は変わりません。

まとめ

ベンドアは、その華麗な競走馬としてのキャリア、種牡馬としての成功、そして、現代科学によって明らかになりつつある血統の謎など、数々のドラマチックな出来事を秘めた名馬です。その生涯は、競馬史における重要な一ページを飾るとともに、現代競馬の礎を築いた存在として、長く人々の記憶に刻まれ続けることでしょう。彼の血統は、現代のサラブレッド競馬において、依然としてその影響力を持ち続けています。

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