ストラスブール (戦艦)

フランス戦艦ストラスブール：その生涯と最期

フランス海軍の戦艦「ストラスブール」は、ダンケルク級戦艦の2番艦として知られています。艦名はフランス東部の都市、ストラスブールに由来し、「ストラスブルグ」と表記される場合もあります。本艦は、ヴェルサイユ条約の制約下でドイツが建造した「ポケット戦艦」に対抗するため、フランスが開発した革新的な戦艦でした。

革新的な設計

ストラスブールの設計は、当時の戦艦としては非常に先進的でした。最大の特徴は、艦首に間隔をあけて配置された2基の13インチ（約33センチ）四連装砲塔です。これは、従来の戦艦に比べて火力の集中と攻撃力の向上を実現しました。また、副砲には対艦・対空両用砲を採用し、柔軟な運用性を確保。さらに、集中防御方式による厚い装甲と30ノット以上の高速性を兼ね備えていました。姉妹艦であるダンケルクと比較すると、ストラスブールは操舵艦橋が二段式になっており、煙突の上部構造も大型化されている点が外見上の違いです。また、防御力も強化され、15インチ砲弾にも対応できる設計となっています。

波乱の艦歴

ストラスブールは1934年11月、サン＝ナゼールのロワール造船所で起工、1936年12月に進水し、1938年12月に就役しました。第二次世界大戦の勃発直前には、イギリス海軍との親善交流のため、姉妹艦ダンケルクと共にイギリス各地を訪問しました。

大戦が始まると、ストラスブールはドイツ海軍の通商破壊艦に対抗する任務に就きます。重巡洋艦アルジェリー、デュプレクス、イギリス海軍の空母ハーミーズなどと共に編成された部隊は、ダカールを拠点に大西洋でドイツ艦船の捜索を行いました。幾つかの成功を収めた後、1940年4月には北アフリカのメルセルケビールに移動、ノルウェー作戦にも参加しています。

しかし、フランスの降伏後、イギリスはフランス艦隊がドイツに接収されることを懸念し、カタパルト作戦を発動。メルセルケビール沖でフランス艦隊への攻撃が行われ、ストラスブールは激しい戦闘を繰り広げますが、損傷を免れてトゥーロンに脱出しました。

その後、ストラスブールはヴィシー政権下のフランス海軍の旗艦となり、新型の対空レーダーも装備されます。しかし、1942年11月、連合国軍によるトーチ作戦を受け、ドイツ軍がフランス艦隊の接収を試みたため、ストラスブールはトゥーロンで自沈処分されました。

1943年にはイタリアによって浮揚されましたが、損傷が激しかったため、修理は行われず、後にドイツの手に渡ります。1944年にはアメリカ軍の爆撃を受け再び撃沈。トゥーロン解放後、再び浮揚され、海中爆破実験に使用された後、1955年にスクラップとして売却されました。ストラスブールは、その短いながらも波乱に満ちた艦歴の中で、近代戦艦の技術革新と、激動の時代の流れを象徴する存在でした。

参考文献

酒井三千生『ラプラタ沖海戦』
ジョン・ジョーダン『戦艦　AN ILLUSTRATED GUIDE TO BATTLESHIPS AND BATTLECRUISERS』
「世界の艦船」シリーズ（海人社）
福井静夫 著『新装版　福井静夫著作集 ― 軍艦七十五年回想第六巻 世界戦艦物語』
三野正洋『地中海の戦い』
ミリタリー・クラシックス編集部『第二次大戦 世界の艦艦』
John Jordan, Pobert Dumas, French Battleships 1922-1956, Seaforth Publishing
国立国会図書館デジタルコレクション
海軍研究社編輯部 編『ポケット海軍年鑑』
海軍有終會編輯部同人 共譯『ブラッセー海軍年鑑(譯書)』

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