ストラティオス

ストラティオス

ストラティオス（古希: Στρατίος, Stratios）は、ギリシア神話における重要な人物の一人であり、ピュロスの賢明な王ネストールの子として知られています。彼の名はストラティコス（古希: Στράτιχος, Stratikhos）とも記されることがあります。母親については明確な伝承が一つではなく、エウリュディケーとする説と、アナクシビアーとする説が存在します。ネストール王は非常に多くの子に恵まれましたが、ストラティオスもその一人です。

ストラティオスには多くの兄弟姉妹がいました。特に有名な兄弟としては、トロイア戦争で勇名を馳せながらも命を落としたアンティロコスが挙げられます。他にも、トラシュメーデース、ペイシストラトス、エケプローン、ペルセウス、アレートスといった男兄弟がいました。また、姉妹としては、ペイシディケーとポリュカステーが知られています。これらの兄弟姉妹たちは、ピュロス王宮におけるネストールの家庭を構成する面々でした。多くの資料でネストールの子供たちが列挙される際に、ストラティオスの名が記されています。

彼の最も著名な登場は、ホメーロスの不朽の叙事詩『オデュッセイアー』においてです。この物語の中で、父オデュッセウスの消息を求めて旅に出た若き王子テーレマコスが、助言と情報を得るためにピュロスを訪れます。ネストール王はテーレマコスを温かく迎え入れ、彼自身のトロイア戦争での経験や、帰国した他のアカイア人たちの運命について語ります。このネストール王との会見の場面に、ストラティオスは兄弟たちと共に登場します。

『オデュッセイアー』の中で描かれるピュロスでの一幕では、テーレマコスが海岸に上陸し、そこでネストール王とその息子たちが海神ポセイドーンへの盛大な供儀を行っている場に遭遇します。ストラティオスを含むネストールの子らは、客人であるテーレマコスとその一行を丁重にもてなします。彼らはテーレマコスに席を勧め、食事を提供し、供儀への参加を促します。具体的には、ネストールの末子であるペイシストラトスがテーレマコスに最も親しく接しますが、ストラティオスや他の兄弟たちもまた、客人をもてなす一連の儀式に参加しています。この場面は、古代ギリシアにおける客人歓待（クセニア）の精神を示す典型的な例であり、ネストールとその家族、特に息子たちの礼儀正しさと敬虔さを示しています。

テーレマコスがネストール王にオデュッセウスについて尋ねる際、ストラティオスは兄弟たちと共にその話を聞いています。彼自身が物語の中で中心的な役割を果たすわけではありませんが、ネストール王の家庭の一員として、またテーレマコスという重要な客人を出迎える者として、その存在が描かれています。ホメーロスは、ネストール王の息子たちが皆父の周りに集まり、共に供儀を行い、客人をもてなす様子を描くことで、王家の結束と繁栄を示唆しています。ストラティオスもまた、この安定した王国の日常の一部として描かれています。

ストラティオスは、英雄的な戦いや冒険で際立った活躍をした人物としてではなく、偉大な父ネストール王の子として、そしてトロイア戦争後の混乱期におけるピュロス王宮の一員として、叙事詩の世界にその名が残されています。彼の名前は、ネストール家の広範な系譜と、その家系がホメーロスや他の古代ギリシアの詩人・著述家によってどのように描かれたかを知る上で重要な要素となります。彼は、ピュロスという国とその王家の安定性、そして伝統的な価値観の継承を象徴する存在の一人とも言えるでしょう。このように、ストラティオスはギリシア神話の系譜と叙事詩の中の特定の場面を結びつける人物として、その名が記憶されています。

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