スノーウィーマウンテンズ計画

スノーウィーマウンテンズ計画：豪州の発展を支えた巨大プロジェクト

スノーウィーマウンテンズ計画は、オーストラリア南東部で実施された、水力発電と灌漑を目的とした大規模な国家プロジェクトです。1949年から1972年にかけて建設され、16の主要なダム、9つの発電所、2つのポンプ場、そして総延長225kmにも及ぶトンネル、水道橋、パイプラインによって構成されています。

計画の概要

この計画は、スノーウィー川とその支流の水を、グレートディヴァイディング山脈を貫通するトンネルを通してマレー川とその支流のマランビジー川へと導くものです。標高差を利用して水力発電を行い、その電力はニューサウスウェールズ州、ビクトリア州、オーストラリア首都特別地域に供給されています。また、分水嶺を越えて大量の水を輸送することで、マレー川・マランビジー川流域の農業生産を増強する役割も担っています。

2016年には、オーストラリア国定記念物（NHL）に認定されました。

歴史的背景

19世紀以降、マレー川とその支流は水供給や灌漑の観点から管理されていましたが、スノーウィー川は未開発でした。そこで、スノーウィー川の水を山脈を越えて運び、水力発電を行うとともに、マレー川・マランビジー川流域の農業生産を増強する計画が立案されました。

第二次世界大戦後、各州政府がそれぞれの利害に基づいてスノーウィー川の利用を提案したため、連邦政府が調整に入り、1949年にスノーウィーマウンテンズ水力発電公社が設立されました。主任技術者には、ニュージーランド出身のウィリアム・ハドソンが選ばれ、海外から労働者を集め、計画を推進しました。

建設の過程

1951年にはアメリカ合衆国開拓局（USBR）との間で技術支援協定が締結され、1960年には世界銀行から融資を受けました。建設には30カ国以上から10万人以上の労働者が集められ、その7割は難民でした。この計画は、オーストラリアの経済発展に大きく貢献するとともに、多くの移民に雇用機会を提供しました。

1960年から1967年まで、計画のために「Snowcom」と呼ばれるオーストラリア初のトランジスタ・コンピュータが使用されました。この計画は、米国土木学会から「世界クラスの土木プロジェクト」と称賛されています。

1972年10月27日、チュマット水力発電所の「チュマット3発電所」の公式落成式によって、この計画は完成を迎えました。

安全性への配慮

建設過程では、トンネル内を走行する車両の運転手と助手席の乗員にシートベルトの着用を義務付けるなど、革新的な安全対策が導入されました。

運用と管理

現在、スノーウィーマウンテンズ計画は、スノーウィー水資源企業によって管理されています。

環境への影響と対策

当初の計画では、スノーウィー川の流量の大部分をマレー川流域に流すことになっていたため、下流の生態系に大きな影響を与えました。1998年には大規模な市民運動が起こり、流量を増加させるための調査が行われました。その結果、流量を段階的に増加させることで合意し、現在では自然流量の21%まで回復しています。

観光資源としての側面

スノーウィーマウンテンズ地域は、計画によってインフラが整備されたことに加え、ヨーロッパからの労働者によってスキー文化が持ち込まれ、オーストラリアを代表するスキーリゾートとして発展しました。2011年にはスノーウィー計画博物館がオープンし、計画の歴史を紹介しています。

スノーウィーマウンテンズ計画は、オーストラリアの発展に大きく貢献しただけでなく、多文化社会の形成にも重要な役割を果たしました。その壮大なスケールと技術力は、今もなお多くの人々を魅了し続けています。

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