スノードニア

スノードニア国立公園：ウェールズの雄大な山岳地帯

スノードニア国立公園は、ウェールズ北西部の広大な山岳地帯に広がる国立公園です。その面積は2,130平方キロメートルにも及び、1951年にウェールズで最初に指定された国立公園として、イギリスの自然保護において重要な役割を担っています。

名称の由来と議論

英語名「スノードニア」は、ウェールズ最高峰のスノードン山（標高1,085メートル）に由来します。中世にはイングランドの船乗りが遠くに冠雪したこの山を「雪の丘」と呼んだのが始まりと言われています。一方、ウェールズ語では「エラリ（Eryri）」と呼ばれ、この名称の由来については諸説あります。「鷲の国」を意味する説や、高地を意味するウェールズ語の語源に由来する説などがあり、現在も議論が続いています。近年では、ウェールズ語名「エラリ」を唯一の名称とする動きがあり、スノードンやスノードニアといった英語表記の使用禁止を訴える声も上がっています。しかし、長年にわたる慣習や観光業への影響などを考慮し、名称変更は2021年4月に否決されました。

地理的特徴：山々、湖沼、河川

スノードニア国立公園は、スノードン山塊をはじめ、グリデライ、カルネザイ、モエルウィニオン、モエル・ヘボグといった山々の連なりが特徴です。スノードン山は、スコットランド高地を除くイギリスで最も高い山として知られており、多くの登山客を魅了しています。公園内には、スノードン山だけでなく、アラン・ヴァウズゥイ、カダイル・イドリスなど、標高の高い山々が数多く存在します。これらの山々は、氷河作用によって形成された独特の地形をしており、圏谷（クーム）と呼ばれるU字谷や、モレーンと呼ばれる氷堆石などの氷河地形が見られます。

公園内には大小様々な湖沼（ウェールズ語: llyn）も点在しており、バラ湖、ペリス湖、クゥエシン湖などが有名です。これらの湖は、氷河作用によって形成された圏谷に水が溜まってできたものです。また、人造湖であるケラン湖やトラウスヴァニズ湖もあります。

河川（ウェールズ語: afon）は、比較的短く急勾配で、カーディガン湾へと流れ込みます。コンウィ川、セイオント川、グゥイルヴァイ川などが主要な河川です。

自然：動植物相

スノードニア国立公園には、多様な動植物が生息しています。哺乳類では、シロイワヤギ、ユーラシアカワウソ、ヨーロッパケナガイタチなどが生息し、希少種のマツテンも確認されています。鳥類では、ワタリガラス、ベニハシガラス、ハヤブサなどが観察され、かつてイギリスで絶滅したミサゴも生息しています。

植物相においては、スノードン・リリーやスノードニア・ホークウィードといった固有種が見られます。しかし、外来種のツツジの侵入が問題となっており、在来種への影響が懸念されています。

スノードニア国立公園の管理

スノードニア国立公園は、地方政府とウェールズ政府の代表で構成されるスノードニア国立公園局によって管理されています。公園内には、農業活動や居住地も存在し、公園局は自然保護と地域社会の共存を目指した取り組みを行っています。ウェールズ語話者の割合も高く、地域の文化と自然が密接に結びついています。

歴史と産業

この地域には、紀元前からの古代遺跡が数多く残されており、新石器時代や青銅器時代の遺跡、ローマ時代の砦の跡などが発見されています。中世には、ウェールズの諸侯が城塞を築き、領地を守っていました。

18世紀以降は、スレート採掘が盛んになり、スノードニアは世界有数のスレート産地となりました。スレート産業は地域の経済を支えてきましたが、20世紀以降は衰退し、現在は観光業が主要産業となっています。現在もわずかにスレート生産は行われていますが、最盛期の面影はありません。

交通：道路、鉄道、保存鉄道

スノードニア国立公園内には、いくつかの幹線道路が整備されています。A55号線、A470号線、A487号線などが主要な道路です。また、鉄道も通っており、ノース・ウェールズ・コースト線、コンウィ・ヴァレー線が運行しています。

この地域には、スノードン登山鉄道など、多くの保存鉄道が運行されており、観光客に人気です。スノードン登山鉄道は、スノードンの頂上まで運行していることで有名です。他にも、バラ湖鉄道、ウェルシュ・ハイランド鉄道、フェスティニオグ鉄道などがあります。

保護地域

スノードニア国立公園の面積の約20パーセントは、様々な保護地域に指定されており、自然環境の保全が進められています。保全特別地域 (SAC)、学術研究上重要地域 (SSSI)、国立自然保護区 (NNR)、ラムサール条約湿地など、多くの指定を受けています。

観光

スノードニア国立公園は、年間380万人以上の観光客が訪れる人気の観光地です。スノードン山への登山、ハイキング、そして保存鉄道の乗車などが人気の観光アクティビティです。公園内には、1,479マイル (2,380 km) のパブリック・フットパスや、長距離フットパスが整備されており、自然を満喫できます。

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