スバル・1500

スバル1500について

スバル1500（SUBARU 1500）は、富士重工業が1954年に完成させた小型自動車であり、同社における初の乗用車でもあります。この車は、日本で初めてフル・モノコック構造を導入したモデルとして注目されました。設計段階でのコードネームは「P-1」とされ、実際の量産には至らないまま、試作車としてわずかに製造されました。

車両の概要

スバル1500は、ノッチバックセダン型の4ドア6人乗り車両です。外観はスペースを最大限に生かしたデザインが施されており、近代的なポンツーン・スタイルを取り入れています。このスタイルは、1950年に発売されたフォード・コンサルからの影響を受けたとされる”。

この車は、軽量化を目的にフル・モノコック構造を採用した日本で初めての乗用車でもあり、その革新性は評価されました。また、前輪には独立懸架方式でウィッシュボーン式サスペンションが使用され、後輪は車軸懸架方式で、フリクションの少ないリーフスプリングと共に複動式オイルダンパーによって快適な乗り心地を実現しています。これにより、他の日本製乗用車と比べても高い耐久性を誇っていました。

発動機と駆動系

スバル1500には1.5Lの水冷直列4気筒OHVエンジンがフロントに搭載されており、プロペラシャフトを通じて後輪を駆動します。このエンジンの開発においても、一般的な方式を採用していました。

当初、富士重工業内では社内募集により愛称を決定することが試みられ、「パンサー」や「フェニックス」といった名称案が提出されましたが、これらは却下されました。最終的には、同社の初代社長である北謙治がスバルという名称を選ぶことになり、昴星（プレアデス星団）にちなんで命名されました。スバル1500は、この名称が付けられた初めての自動車でもあります。

開発の過程

スバル1500の開発は、旧・中島飛行機の関連企業である富士自動車工業で始まりました。1950年、経営者である松林敏夫が普通乗用車開発を提案し、百瀬晋六がその設計に取り組みました。百瀬は、数多くの資料を調査し、海外の自動車に関する情報を集めて開発を進めました。1952年には、技術者たちと共に1500ccのセダンを設計するチームが組織され、開発が本格化しました。

試作車は1954年の2月に4台が完成し、伊勢崎から成田までの長距離ドライブテストが行われました。この際、大きなトラブルもなく、成功裏に試走を終えました。

しかし、最終的にスバル1500の量産計画は経済的な理由から見送りとなりました。国内にはすでに多くの先行メーカーが存在し、新規参入には厳しい競争が予想されました。これに加え、量産体制を整えるための資金投入が過大になることも問題視されました。パイプラインでは、スバル1500の他に、トラックタイプのT-10も試作されましたが、量産には至りませんでした。

スバル1500の影響

スバル1500の開発が中止された後、富士重工業は新たなプロジェクトに乗り出しました。特に注目されたのが、スバル・360の開発です。この軽自動車においては、スバル1500で得た経験が大いに活用されました。二輪車や小型トラックなど新しい車両の開発を通じて、富士重工業は確かな技術力を築きました。

まとめ

スバル1500は、革新的なデザインと技術を誇る車両でありながら、商業的には成功しなかったものの、ブランドの成長に大きく寄与したプロジェクトでした。この試作車は現在、スバル群馬製作所の訪問者センターで展示されており、その歴史を語り継いでいます。

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