スパルタ大隊

スパルタ大隊：冷酷な武装部隊の実態

スパルタ大隊は、ウクライナ東部の分離主義勢力「ドネツク人民共和国」（DPR）が擁する武装部隊です。2014年の結成以来、ドンバス戦争や2022年のロシアによるウクライナ侵攻において、ウクライナ軍と激戦を繰り広げてきました。2022年末には、ドネツク人民共和国のロシア連邦への編入に伴い、スパルタ大隊もロシア陸軍に組み込まれ、第80独立親衛偵察大隊として再編されました。

結成と初期の活動

スパルタ大隊は、2014年8月にロシア出身のアルセン・パブロフ（通称「モトローラ」）が、既存の対戦車・機関銃部隊を基盤にドネツクで創設しました。パブロフは、結成当初から2016年10月に死亡するまで、部隊を率いました。その後、スラビャンスク出身のウラジーミル・ゾガ（通称「Vokha」）が指揮を引き継ぎ、2022年3月に戦死するまで大隊を率いました。

戦闘の歴史

スパルタ大隊は、数々の激戦に参加してきました。

2014年: イロヴァイスクの戦い
2015年: 第二次ドネツク空港の戦い。この戦いでは、捕虜としたウクライナ兵に他のウクライナ兵の遺体を運ばせる様子が撮影されました。パブロフは「我々の仕事は死体の回収ではなく、死体を作ることだ」と述べたとされています。
2015年1月: デバルツェボの戦い
2016年3月: ドクチャイエフスクでの小規模な武力衝突
2016年9月: ルガンスク人民共和国への配備（想定されるクーデターの阻止目的）
2016年後半: ドネツィク国際空港への配備
2022年3月: ロシアのウクライナ侵攻中、指揮官のウラジーミル・ゾガ大佐がヴォルノヴァーハで戦死。ゾガは死後、ロシア連邦英雄の称号を授与されました。

戦争犯罪の疑い

スパルタ大隊は、その冷酷さから、数々の戦争犯罪に関与したとされています。

2015年2月: ウクライナ保安庁（SSU）は、スパルタ大隊とその指導者パブロフが、殺人、いじめ、拷問、奴隷労働の強制などの戦争犯罪に関与した疑いで捜査を開始。
2015年4月: アムネスティ・インターナショナルは、パブロフがドネツク空港で捕虜にしたウクライナ兵を拷問・殺害したと非難。キーウ・ポストのインタビューで、パブロフは捕虜のイーホル・ブラノヴィツキーを殺害したと語ったとされる。このインタビュー音声はYouTubeに投稿され、物議を醸しました。パブロフは、インタビューで15人の捕虜を射殺したと主張しました。BBCがインタビューしたウクライナ人捕虜の生存者は、パブロフがブラノヴィツキーに発砲しているのを目撃したと証言しています。
2016年: Vice Newsは、2014年にスパルタ大隊のメンバーが、ウクライナ人捕虜にウクライナ兵の遺体を強制的に埋葬させたという証言を報道しました。

インターポールは、パブロフに対する国際手配を政治的な理由で拒否しました。

メンバー構成

スパルタ大隊には、モルドバなどからの外国人戦闘員も含まれていると報告されています。2015年4月5日には、ドネツィク州の警察署長が、大隊メンバー40人の名前をFacebookに投稿しました。

シンボル

大隊旗には、Mの文字が描かれています。これは、部隊の初期指揮官であるアルセン・パブロフのコールサイン「モトローラ」に敬意を表したものです。また、スパルタ大隊は、戦闘中にロシア帝国の三色旗を掲げていたと報じられています。

まとめ

スパルタ大隊は、その残虐性から国際的な批判を浴びてきました。彼らの行動は、武力紛争における非人道的な行為の一例として、今後も注視していく必要があるでしょう。



画像1：スパルタ大隊の兵士
画像2：スパルタ大隊の旗
画像3：モトローラ
画像4：スパルタ大隊のシンボル

[参考文献]
* Chevreul (2016年11月19日). “How soldiers survive at the frontline of the battle of Donetsk airport”. The Independent.

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