スパンタックス275便墜落事故

スパンタックス275便墜落事故：155名の命を奪った悲劇

1972年12月3日、スペインのテネリフェ島で発生したスパンタックス275便の墜落事故は、155人もの犠牲者を出す大惨事となりました。テネリフェ・ノルテ空港を離陸直後の機体が制御不能に陥り、墜落。この事故は、当時のスペイン航空史上最悪の事故として、深く人々の記憶に刻まれています。

事故の概要

スパンタックス275便は、テネリフェ・ノルテ空港からドイツのミュンヘン・リーム空港へ向かうチャーター便でした。使用機材はコンベア990-30A-5（機体記号：EC-BZR）で、1962年に製造された機体でした。事故当時、機体は総飛行時間24,161時間を記録していました。

乗員は7名で、その内1名がドイツ人客室乗務員、残りの6名はスペイン人でした。乗客は148名で、そのほとんどが西ドイツ・バイエルン州在住のドイツ人およびその親族でした。乗客の中には、オーストリア人が3名、イタリア人が2名含まれていました。

事故発生の経緯

275便は、乗客を乗せたギリシャ籍のクルーズ船「Jason」がテネリフェ・ノルテ空港に到着後、現地時間5時30分頃、離陸準備を開始しました。しかし、当時の空港は濃霧に覆われ、視界はほぼゼロという状況でした。

6時45分、275便は滑走路30から離陸しました。高度300フィート（約91メートル）までは正常に上昇しましたが、直後に機体は突然急旋回しました。その後、機体は急速に高度を失い、滑走路端から1,050フィート（約320メートル）の地点に墜落しました。

墜落現場から乗客の1名が救出されましたが、病院への搬送中に死亡。最終的に乗員乗客155人全員が犠牲となりました。当時、この事故はスペイン史上最悪の航空事故であり、コンベア990型機としても最悪の事故として記録されています。

事故調査と原因

事故調査は、スペイン警察当局が主導して行われました。事故当時、目撃者から「空中で閃光を見た」という証言があったため、当初はエンジン火災やテロ行為の可能性も視野に入れて調査が行われました。しかし、現場の調査の結果、これらの可能性を示す痕跡は見つかりませんでした。

最終的に、事故原因はパイロットエラーであると結論付けられました。濃霧で視界がほぼゼロという状況下で、パイロットが離陸直後に空間識失調に陥り、不適切な操縦を行ったことが原因と推定されました。

事故の影響と教訓

スパンタックス275便の墜落事故は、航空安全に対する認識を新たにする契機となりました。特に、悪天候下での操縦の難しさと、パイロットの空間識失調の危険性が浮き彫りになりました。この事故の教訓は、その後の航空安全対策に活かされています。

関連する航空事故

テネリフェ空港ジャンボ機衝突事故: 1977年にテネリフェ島で発生した、2機のボーイング747型機が衝突した大惨事。航空史上最悪の事故の一つ。
ダン・エア1008便墜落事故: 1985年にスペインで発生した航空事故。原因はパイロットエラーとされた。
* スパンタックス995便離陸失敗事故: 1983年にスペインで発生したスパンタックス航空の事故。離陸に失敗し、死者が出た。


このスパンタックス275便の墜落事故は、155名もの命を奪った痛ましい出来事として、航空史に深く刻まれています。この悲劇を二度と繰り返さないためにも、私たちは航空安全に対する意識を常に高く持ち続ける必要があります。

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