スピアン・トマ

スピアン・トマ（クメール語: ស្ពានថ្ម）は、カンボジアのアンコール地域に位置する歴史的な石橋であり、「石の橋」を意味します。この橋は、クメール王朝時代に建設された数少ない橋の一つであり、タ・ケウ寺院の西に位置しています。

スピアン・トマは、アンコール・トムと東バライの間、シェムリアップ川の手前の小道に建設されました。この場所は、古代の交通路の一部として重要な役割を果たしていたと考えられます。橋の建設には、多くの再利用された砂岩のブロックが使用されており、このことから、クメール時代（15世紀頃）の後、16世紀中頃に再建された可能性が高いとされています。再建された理由は明確ではありませんが、既存の構造物を活用することで、建設にかかる時間と労力を削減したと考えられます。

現在、スピアン・トマには14の狭いアーチ（迫り出し構造の隙間）が残っており、それぞれの幅は約1.6メートルです。これらのアーチは、橋の構造的な特徴であり、建設当時の技術力を示すものです。橋の中央部分は、樹の根が張っているにもかかわらず崩壊せずに残存しており、自然の力と歴史的建造物の耐久性の両方を感じさせます。この橋は、自然と文化が共存する場所であり、訪れる人々に深い印象を与えます。

アンコール地域には、スピアン・トマと同様の構造を持つ橋がいくつか存在します。例えば、スピアン・メーマイもその一つであり、これらの橋はクメール王朝の建築技術の広がりを示しています。さらに、アンコールから南東に向かう道にはスピアン・プラプトスがあり、これは25のアーチを持つ最も長い石橋の一つです。これらの橋は、当時の交通網や地域間の交流を理解するための重要な手がかりとなっています。

スピアン・トマは、クメール王朝時代の建築技術と歴史を今に伝える貴重な遺産です。橋の構造や材料、建設場所などから、当時の社会や文化について多くのことを学ぶことができます。観光客だけでなく、歴史研究者にとっても重要な場所であり、今後の調査によって、さらに多くの事実が明らかになることが期待されます。

参考文献

* Rooney, Dawn F. (2011). Angkor: Cambodia's wondrous khmer temples (6th ed.). Odissey. ISBN 978-962-217-802-1

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