タ・ケウ

タ・ケウは、アンコール遺跡の一つで、「クリスタルの古老」を意味する名前を持ちます。10世紀末、ジャヤヴァルマン5世によって建設が開始されましたが、王の死去により未完成のまま放置された、独特なピラミッド型のヒンドゥー寺院です。

呼称と建設中断の謎

タ・ケウの「タ」は「おじいさん」を意味し、「ケウじいさん」と訳されます。タ・プロームやタ・ソムも同様の呼称です。地元ではプラサット・ケウと呼ばれています。建設が中止された理由には、ジャヤヴァルマン5世の死と内乱という説と、建設中に中央祠堂に落雷があり、神の怒りとして建設が中断されたという説があります。

構造の特徴

東西120m、南北100mの広さを持ち、5層の基壇からなる美しいピラミッド型をしています。四方に副祀堂を備えた5塔主堂型の平面構造で、東西南北に塔門があります。現在は水のない環濠の内側に二重の周壁に囲まれて建っています。建設途中で中止されたため、当時の石材の積み上げ方などの建築方法や手順を解明する上で非常に役立っています。

建材と建築様式

建材には主に砂岩が用いられ、基部にはラテライトが使用されています。高さは50mにも達し、その威容は見る者に威圧感を与えます。中央塔にはシヴァ神が祀られています。クメール建築としては初めて回廊を設置した寺院であり、新しい造形への挑戦がなされています。もし完成していれば、ピラミッド型寺院の中でも最上のものの一つに数えられた可能性が高いでしょう。建設が中断されたため、他のアンコール遺跡によく見られる彫刻が施されていません。しかし、そのおかげで建築工程を知るための貴重な情報が得られています。見学時には通常、賑やかな南門へ案内されることが多いですが、真の正門は東側にあります。現在、東側は寂れた印象ですが、境界石と参道跡が残っており、この参道は500m離れた東バライ西岸へと続いています。

他の遺跡との違い

他の遺跡とは異なる雰囲気を持つのは、建設中断のため石が積まれたままの彫刻がない荒々しい外観に加え、伽藍を取り巻く回廊の外観部に偽窓が造営されている点です。内部には採光や通気のための真の窓が設けられていますが、この窓の構成が遺跡全体に閉鎖的、または堅苦しい印象を与えているという指摘もあります。

交通アクセス

アンコール・トムの東端にある勝利の門から約1kmの距離に位置しています。シェムリアップの中心部からは直線距離で約9kmです。三輪タクシーを利用すると約20分でアクセスできます。

参考文献

『地球の歩き方 ガイドブック D22 アンコール・ワットとカンボジア』
『ディープ・アジア』2003年（ワニブックス）

参考サイト

Ta Keo タ・ケウ/アンコール遺跡フォトギャラリー
アンコール・ワット フラリー
* 上智大学アンコール遺跡国際調査団

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