スピード・オブ・サウンド (アルバム)
1976年にリリースされたウイングスのアルバム『スピード・オブ・サウンド』は、当時のバンドの勢いを反映した活気あふれる作品です。
本作は、1975年9月から翌1976年10月にかけて行われた、ウイングスとして初めての本格的なワールドツアーの合間を縫って制作されました。過密なライブスケジュールの傍らでレコーディングを進めるという、タフな状況下で生み出されたアルバムです。
この時期、ウイングスは依然として「ポール・マッカートニーのバックバンド」というイメージで見られることが少なくありませんでした。そこでポールは、このアルバムを制作するにあたり、バンドとしての個性と多様性をより明確に打ち出すことを目指しました。そのために取られた重要なアプローチの一つが、メンバー全員がリードボーカルを担当する機会を設けることでした。
結果として、リードボーカルはポール・マッカートニーだけでなく、他のメンバーにも振り分けられました。例えば、ベーシスト兼ボーカリストのデニー・レインは、「君のいないノート (The Note You Never Wrote)」と「やすらぎの時 (Time to Hide)」で叙情的な歌声を披露しています。ギタリストのジミー・マカロックは、自身の作曲によるロックナンバー「ワイノ・ジュンコ (Wino Junko)」を担当しました。ドラマーのジョー・イングリッシュも、「マスト・ドゥ・サムシング (Must Do Something About It)」で初めてリードボーカルを務め、その意外な才能を示しました。そして、ポールと共にウイングスの中心メンバーであるリンダ・マッカートニーも、「クック・オブ・ザ・ハウス (Cook of the House)」で可愛らしいボーカルを聴かせています。このように、ポール以外のメンバーがそれぞれ個性を発揮することで、アルバム全体に彩りと奥行きがもたらされました。
もちろん、バンドのリーダーであるポール・マッカートニーは、アルバムの核となる多数の楽曲でリードボーカルを務めています。中でも特に大きな成功を収めたのが、先行シングルとして発表された「心のラヴ・ソング (Silly Love Songs)」です。「ラブソングなんて」という世間の声に対する皮肉を込めたこの曲は、全米シングルチャートで合計7週間にわたって第1位を記録する大ヒットとなりました。また、続くシングル「幸せのノック (Let 'em In)」も全米で第3位、全英で第2位とヒットし、アルバムのセールスを強力に後押ししました。
商業的にも本作はウイングスにとって最大の成功作の一つとなりました。特にアメリカでは、ツアーの成功とも相まって、アルバムチャートで合計7週間にわたり第1位を獲得しました。これは、ビートルズ解散後、ポール・マッカートニーのソロ名義またはウイングス名義のアルバムの中で最も長く全米1位に輝いた記録であり、当時の彼の人気の絶頂を物語っています。1976年のビルボード年間チャートでも第3位にランクインするなど、その影響力の大きさが伺えます。母国イギリスでは残念ながら第2位止まりでしたが、それでも十分なセールスを記録しました。
『スピード・オブ・サウンド』は、ポールだけでなくバンドメンバーそれぞれの個性を尊重し、ウイングスが単なるポールのプロジェクトではなく、一つの結束したバンドであることを証明しようとした意欲作であり、その試みは商業的な大成功という形で報われました。収録曲はバラエティに富み、当時のウイングスの充実ぶりを感じさせるアルバムと言えるでしょう。
特記なき楽曲はポール・マッカートニーとリンダ・マッカートニーの共作です。
幸せのノック (Let 'em In)
君のいないノート (The Note You Never Wrote) - リードボーカル：デニー・レイン
僕のベイビー (She's My Baby)
愛の証 (Beware My Love)
ワイノ・ジュンコ (Wino Junko) - 作：ジミー・マカロック、コリン・アレン / リードボーカル：ジミー・マカロック
心のラヴ・ソング (Silly Love Songs)
クック・オブ・ザ・ハウス (Cook of the House) - リードボーカル：リンダ・マッカートニー
やすらぎの時 (Time to Hide) - 作・リードボーカル：デニー・レイン
マスト・ドゥ・サムシング (Must Do Something About It) - リードボーカル：ジョー・イングリッシュ
サン・フェリー・アン (San Ferry Anne)
やさしい気持 (Warm and Beautiful)
エロイズ (Walking in the Park with Eloise) - 作：ジェームズ・マッカートニー
ブリッジ・オーヴァー・リヴァー・スイート (Bridge Over River Suite)
サリー・G (Sally G)
アルバム概要
本作は、1975年9月から翌1976年10月にかけて行われた、ウイングスとして初めての本格的なワールドツアーの合間を縫って制作されました。過密なライブスケジュールの傍らでレコーディングを進めるという、タフな状況下で生み出されたアルバムです。
この時期、ウイングスは依然として「ポール・マッカートニーのバックバンド」というイメージで見られることが少なくありませんでした。そこでポールは、このアルバムを制作するにあたり、バンドとしての個性と多様性をより明確に打ち出すことを目指しました。そのために取られた重要なアプローチの一つが、メンバー全員がリードボーカルを担当する機会を設けることでした。
結果として、リードボーカルはポール・マッカートニーだけでなく、他のメンバーにも振り分けられました。例えば、ベーシスト兼ボーカリストのデニー・レインは、「君のいないノート (The Note You Never Wrote)」と「やすらぎの時 (Time to Hide)」で叙情的な歌声を披露しています。ギタリストのジミー・マカロックは、自身の作曲によるロックナンバー「ワイノ・ジュンコ (Wino Junko)」を担当しました。ドラマーのジョー・イングリッシュも、「マスト・ドゥ・サムシング (Must Do Something About It)」で初めてリードボーカルを務め、その意外な才能を示しました。そして、ポールと共にウイングスの中心メンバーであるリンダ・マッカートニーも、「クック・オブ・ザ・ハウス (Cook of the House)」で可愛らしいボーカルを聴かせています。このように、ポール以外のメンバーがそれぞれ個性を発揮することで、アルバム全体に彩りと奥行きがもたらされました。
もちろん、バンドのリーダーであるポール・マッカートニーは、アルバムの核となる多数の楽曲でリードボーカルを務めています。中でも特に大きな成功を収めたのが、先行シングルとして発表された「心のラヴ・ソング (Silly Love Songs)」です。「ラブソングなんて」という世間の声に対する皮肉を込めたこの曲は、全米シングルチャートで合計7週間にわたって第1位を記録する大ヒットとなりました。また、続くシングル「幸せのノック (Let 'em In)」も全米で第3位、全英で第2位とヒットし、アルバムのセールスを強力に後押ししました。
商業的にも本作はウイングスにとって最大の成功作の一つとなりました。特にアメリカでは、ツアーの成功とも相まって、アルバムチャートで合計7週間にわたり第1位を獲得しました。これは、ビートルズ解散後、ポール・マッカートニーのソロ名義またはウイングス名義のアルバムの中で最も長く全米1位に輝いた記録であり、当時の彼の人気の絶頂を物語っています。1976年のビルボード年間チャートでも第3位にランクインするなど、その影響力の大きさが伺えます。母国イギリスでは残念ながら第2位止まりでしたが、それでも十分なセールスを記録しました。
『スピード・オブ・サウンド』は、ポールだけでなくバンドメンバーそれぞれの個性を尊重し、ウイングスが単なるポールのプロジェクトではなく、一つの結束したバンドであることを証明しようとした意欲作であり、その試みは商業的な大成功という形で報われました。収録曲はバラエティに富み、当時のウイングスの充実ぶりを感じさせるアルバムと言えるでしょう。
収録曲
特記なき楽曲はポール・マッカートニーとリンダ・マッカートニーの共作です。
Side 1
幸せのノック (Let 'em In)
君のいないノート (The Note You Never Wrote) - リードボーカル：デニー・レイン
僕のベイビー (She's My Baby)
愛の証 (Beware My Love)
ワイノ・ジュンコ (Wino Junko) - 作：ジミー・マカロック、コリン・アレン / リードボーカル：ジミー・マカロック
Side 2
心のラヴ・ソング (Silly Love Songs)
クック・オブ・ザ・ハウス (Cook of the House) - リードボーカル：リンダ・マッカートニー
やすらぎの時 (Time to Hide) - 作・リードボーカル：デニー・レイン
マスト・ドゥ・サムシング (Must Do Something About It) - リードボーカル：ジョー・イングリッシュ
サン・フェリー・アン (San Ferry Anne)
やさしい気持 (Warm and Beautiful)
1993年ポール・マッカートニー・コレクション盤 ボーナス・トラック
エロイズ (Walking in the Park with Eloise) - 作：ジェームズ・マッカートニー
ブリッジ・オーヴァー・リヴァー・スイート (Bridge Over River Suite)
サリー・G (Sally G)
もう一度検索
【記事の利用について】
タイトルと記事文章は、記事のあるページにリンクを張っていただければ、無料で利用できます。
※画像は、利用できませんのでご注意ください。
【リンクついて】
リンクフリーです。