スペイン人民戦線

人民戦線の概要

人民戦線（じんみんせんせん、スペイン語：Frente Popular）は、1936年から1939年の間、スペインに存在した社会主義連合政権です。この政権の首班を務めたのはマヌエル・アサーニャであり、彼は共和派の指導者として知られています。

経緯

1931年4月、スペインで行われた自治体選挙において共和派が勝利を収め、これを受けてブルボン朝のアルフォンソ13世は退位しました。共和派と農民、労働者、知識人たちは、当時のソ連の繁栄に触発されて社会主義政権の樹立を目指すようになりました。さらに、国内に散在していた各種の社会主義政党をまとめる動きが活発化し、1936年2月に実施された総選挙で勝利を収めました。この選挙によってマヌエル・アサーニャを首班とする挙国一致内閣が形成され、スペインにおける人民戦線戦術の成功例となりました。

この成功に対して、軍部、右翼、地主、旧貴族、カトリック教会といった保守層は強く反発し、特にエミリオ・モラ将軍の指導の下でナショナリスト軍の結成を推進しました。1936年7月18日、モロッコで人民戦線政府に対する反乱が勃発しました。この動きに呼応して、カナリア諸島に派遣されていたフランシスコ・フランコ将軍が実権を握り、スペイン本土各地で反乱が広がりました。

当初、首都マドリードやバルセロナなど、大都市での反乱の鎮圧には成功しましたが、ナバーラ、セビリア、ガリシア、さらにはアフリカの植民地においては反乱軍に制圧され、事態は次第にクーデターから内戦へと発展していきました。こうしてスペイン内戦が始まることとなります。その翌日、左翼共和党の首相サンティアゴ・カサーレス・キローガが辞任し、共和連合のディエゴ・マルティネス・バリオが新たに首相に就任しましたが、短期間で政権は混乱し、再びホセ・ヒラル・ペレイラが組閣を試みましたが効果はありませんでした。

内戦の展開

1936年8月の時点で、全国の大部分が反乱軍の支配下に置かれ、首都マドリードも包囲されました。11月には反乱軍が市内に侵入し、政府機能はバレンシアに移されました。バスク地方のイルンが陥落したことをきっかけに、ホセ・ヒラル・ペレイラ内閣も総辞職せざるを得なくなり、フランシスコ・ラルゴ・カバジェーロが新たに首班となり第四次人民戦線内閣が成立しました。

ソ連や世界各国の社会主義政党からの支援を受けた人民戦線は、しばらくの間は抗戦を続けることができましたが、ファシズム国家であるドイツやイタリアからの軍事支援を受けたナショナリスト軍に圧倒され、次第に劣勢に立たされました。特にカタルーニャ地方のバルセロナが陥落すると、1939年2月には人民戦線政府は国外に亡命し、4月にはナショナリスト軍が首都マドリードを攻め落として内戦が終結しました。

敗因と影響

人民戦線の敗因は社会主義政党間の意見の不一致や、十分に組織化されていない軍備によるものであり、その後のスペインには多くの課題を残しました。内戦を通じて生じた社会的な対立や国の分裂は、長期的にわたってスペインの歴史に深い影を落とすこととなったのです。

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